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ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!のRのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

映画館で。

2023年のアメリカの作品。

監督は「ミッチェル家とマシンの反乱」の脚本を手がけたジェフ・ロウ。

あらすじ

子どもの頃から人間たちから隠れて暮らしてきたタートルズたち。「普通のティーン・エイジャーとしてニューヨークのみんなに受け入れられたい」その願いを叶えるため、新たな友人エイプリルの助けを借りつつ、謎の犯罪組織との戦いに繰り出すタートルズたちだったが、そんな彼らの前に現れたのはミュータント化した敵の大群だった。

今年は「長ぐつをはいたネコと9つの命」や「雄獅子少年」、邦画でも「BLUE GIGANT」、そして大傑作「アクロス・ザ・スパイダーバース」などなど洋邦問わず総じてアニメーション映画のレベルがめちゃくちゃ高い一年なわけだが、夏の大作がひと段落しての9月、新たにその一群に加わる作品が登場!!

それが今作「ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!」。元々タートルズはもろ世代だったこともあり、早くから注目していた作品だったわけだが、それに加えて監督がNetflix独占で配信されてから映画ファンの中でもたちまち話題沸騰、その年のアニメーションの中でも群を抜いてレベルが高いらしい(勿体ぶってまだ未見。)「ミッチェル家とマシンの反乱」の脚本を手がけた人が監督ということで、そりゃレベルも高いだろう!と公開2日目に早速鑑賞してきました!

結論から言えば、面白かった!!ただ、今年の豊作のアニメーションの中だと他の作品よりも個人的にはうーん!てところもあったかなぁ…という感じ。

お話はあらすじの通り、「タートルズ」の映画といえば、1990年のゴールデン・ハーベスト製作の着ぐるみ感溢れる実写化があまりにも有名で、それ以外でも2007年やNetflix製作のアニメーション、そしてマイケル・ベイ総指揮のCGと実写がかけ合わさった一番近々の二部作などわりとアニメ、実写問わず何度も映画化されているわけだが(そういう意味でもわりとあちらでも根強い人気があることが伺える)、今回はアニメでの仕切り直し。

で、やっぱ開始早々、アニメーション表現がすごい!!「スパイダーバース」に似たストリート表現と「長ぐつをはいたネコ」に似た手書きタッチの混ざり合いがとにかく観ていて楽しいんだけど、加えてその手書き表現もどことなく荒々しさというか、言っちゃえば「ラクガキ」表現がクセ強めでキャラクターもゴテゴテしている感じがまた良い。なんとなく初期のアメコミを観ているような感覚に陥るんだけど、昨今のアニメ映画に違わず書き込みと動き込みがものすごいことになってる、すなわち情報量多め。

で、今回ものっけは動物をミュータント化する薬品「ミュータンジェン」が下水道に流れて、その影響で4匹の亀と育て親となるドブネズミがミュータントして…って流れは一緒なんだけど、今作の特筆すべき点としては他の作品のタートルズたちと比べてみても、あまりにも「ティーンエイジ」だという点。

他の映画でも、基本リーダーのレオ以外は陽キャ気質の精神年齢が幼い愉快な奴らだったんだけど、ティーンエイジという割には見た目が大人すぎる感じがあったのに対して、本作では基本的マッシヴだったマイケル・ベイ版と比べてみても等身は少年体型で背丈も小さいし(4匹の中でも筋肉質なラファですら小さく感じる)、今回は字幕で観たんだけど、声を吹き替えている俳優さんの声もかなり若さが出ている。

加えて、内面性も「人間に受け入れられたい」という願望が極めて強く、例えば買い物という名のコソ泥をした帰りに野外映画を人間たちに隠れて観ているシーンではそこだけ実写そのまんまの本物の映像を使った「フェリスはある朝突然に…」の主演のマシュー・ブロデリックを観て、「良いなぁ…」と憧れるシーンはなんか観ていて切ないなぁ…異形の苦しみというか。

また、高校に入学して、プロム(卒業ダンスパーティー)に出たい!という憧れが4匹ともあったり、他の映画だと人間側の頼れる友人ポジだったヒロインのエイプリルにレオが一目惚れしちゃうなどティーンらしく思春期のアレコレが描かれているのが特徴的。

また、四匹それぞれのキャラクターも他の映画よりかは極端に描かれておらず、レオは真面目すぎないし、ラファも一匹狼キャラじゃないし、ドナもガリ勉じゃないし、ミケランジェロ(劇中ではなぜかマイキー)もコメディリリーフなお調子者というよりかはどことなく内気な面が伺える。こじつけてしまえば、そこら辺もまだ何者でもなさというか染まり切っていない印象を受けるかな。

他のキャラクターでいうとエイプリルは黒人設定でまだキャスターではなくキャスター志望でタートルズと同年代の高校生だったり、スプリンター先生(吹き替えがなんとジャッキー・チェン!)が格闘マスターというよりかはマジで初老のオッサンだったりと今作ならではの味付けがなされている。

で、やはり今作、肝は「ミュータント・パニック!」というタイトル通りタートルズ以外でのヴィランとなるミュータントたちが多数出てくる点!!今作ではハエのスーパーフライを筆頭に、ビーバップとロックステディのお馴染みコンビ、エイで歌うことが趣味のレイ・フィレット、コワモテながら実は女性?なワニのレザーヘッド、メカメカしいコウモリのウィングナット、見た目は可愛らしい感じだが普通に大人にカエルのジンギス・フロッグ、あと名前忘れたけど、一番キモくて話が通じないゴキブリのやつとか多種多様!!

その中でも個人的にお気に入りだったのはヤモリのモンド・ゲッコー!!見た目はチルい今どきのスケボーキッズて感じの奴なんだけど、初めっからめちゃくちゃいいやつで、タートルズの中では、特にマイキーと意気投合しちゃう感じがまた微笑ましい。

で、そんなミュータント軍団と対峙する!と思いきや、初めは同じミュータント同士、俺らは血を分けた従兄弟だ!とバイブス感じてボーリング場で打ち上げしちゃう笑

みんななんか楽しそうで普通に楽しんじゃってて面白い。

ただ、スーパーフライの真の計画が明かされると事態は急変、タートルズが計画に賛同しないことがわかると敵意を剥き出しにして、そこから本格的に対峙することになるんだけど、やはりここら辺のアクションシークエンスが凄まじいことになっている。スーパーフライが計画のために必要なアンテナを積んでバンでタートルズが逃げるのをミュータント軍団が追っかけるんだけど、後続するミュータントたちが乗ってる乗り物がめちゃくちゃイカちー感じで、どことなく「マッドマックス」感溢れる中、バンの車内やフロントガラスや屋根上で激しいバトルをテンポ良く繰り広げる楽しさ!!もうここはアニメーション表現をフルに活かしたアクロバティックなアクションの連続でとにかく観ていて楽しい。

他にも序盤、ミュータントたちに行き着く前の小悪党との横スクロールの4匹それぞれのアクションの見せ場などタートルズならではのアクションがあったりするんだけど、ここからは不満点に入るとアクションの見せ場としては思いつく限りそんくらいで少々物足りなかったかなぁ。せっかくタートルズならではのカンフー要素盛り込めるんだから、もっと盛大にアクションやって欲しかったというのが正直なところ。

加えて、今回スーパーフライたちとは別にミュータントたちを付け狙うTCRI研究所っていう人間側の悪役みたいなのが出るんだけど、まぁ正直いらんかなぁ…。そいつらが出てきたことでせっかくのミュータント軍団との対峙に割く時間が少なくなっちゃってるので、終盤わりとあっさりスーパーフライ以外の全員がタートルズ側に賛同して寝返っちゃう。そこはもうちょい、戦ったりなんかしての心変わりを描いた方が愛着持てそうなんだけどなー。

まぁ、ただその点に関してはエンドロール後のタートルズ因縁の相手である「あいつ」の登場にどうやら次作で絡みそうで、今回はその登場のための布石的な役割なのかな?

ただ、そんな不満点を抜きにしてもクライマックスは激アツ!!ミュータンジェンの効果で1人海中や動物園の生き物たちを取り込んで、まさにゴジラさながらのモンスターと化したスーパーフライに捕まってピンチに陥るタートルズとスプリンター先生なんだけど、そんなピンチに手を差し伸べたのは、あれだけ忌み嫌われていた人間たち。そんな市井の名もなき市民たちがタートルズのピンチを救うため、ミュータンジェンの入った容器をバトンにスーパーフライ以外の面々と協力しながらタートルズたちになんとか容器を渡そうと駆け出すくだりは不覚にもグッときてしまった。ここはマジでめちゃくちゃシーンとして熱いし、感動的。

ラストはミュータント軍団もタートルズやスプリンターたちと「ファミリー」となって、タートルズたちも念願の高校に若者ファッションで入学(ドナのファッションがめちゃくちゃイカす!)、無事にプロムにも参加してエイプリルとレオの距離も少し縮まって、みんな嬉しそうで良かったね!な大団円!!うーん、なんかめちゃくちゃ爽快なエンドだなぁ笑。

そんな感じでハードルを上げすぎた部分もあったけど、とにかくアニメーション表現はめちゃくちゃすごくて独自性があって楽しいし、間違いなくタートルズの映画の中では群を抜いたクオリティだと思う。次作の布石も十分だし、ぜひ続編を作って、ここ日本でもタートルズ旋風を更に巻き起こしてほしい!!カワバンガ🐢!!
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