人との関わり方について考えさせられる、丁寧な人間描写の、味わい深い映画。
この映画の人の描写がとても好きだ。優しくもあり厳しくもある、温かくもあり冷たくもある、美しくもあり醜くもある、強くもあり弱くもある。そんな人間の不安定さ不完全さを包み込み、最終的には人との関わりの素晴らしさが心に残る。
ちひろさんは基本的に人に寛容で、誰に対しても態度を変えない。これって表面的には優しい対応だけど、心の深いところでは人を信じておらず、ある種の冷たさがあるんだ。人に期待もしてないし、裏切られる可能性、悪い方向に行く可能性を常に残してる。人に執着をしないから為せる技だ。僕自身も感覚が似ているところがあって、これって人として良い事なんだろうか？なんか自分って嫌な奴だよなぁ…と悩んだことがある。
そんなちひろさんでも、人との関係で深く落ち込むことがあるのは、とても人間的で強い共感を覚えた。基本的には人に期待しないんだけど、やっぱ心許してこの人は大丈夫って思っちゃったりするんだよね。やっぱ人との関わりは難しい。
元風俗嬢という、人間の根源的欲求が剥き出しになる職を経験している背景があるからこそ、キャラ設定の説得力がある。人は弱い。どんなに普段は善い人でも、弱った時には自己中心になり、欲望が剥き出しになる瞬間があるものだ。
これいいねぇって言ったらさ
それいいねって言ってくれて
そうだよねって言ったら
そうだねって言ってくれて
なんか、それだけで良かったんだけどな
人とのちょうどいい関係は、この台詞に集約されているんじゃないかな。
