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Lokis, the Manuscript of Professor Wittembach(英題)のツのレビュー・感想・評価

3.0
プロスペル・メリメの短編小説が原作。舞台はリトアニア。タイトルはリトアニア語で「熊」。フォークホラー。

あらすじ。
牧師でアマチュアの民俗研究家のヴィッテンバッハは、リトアニアのマイナーな言語で聖書を翻訳する仕事を進めていて、貴重な資料を持っているという伯爵に招待される。しかしその一族はどこか不思議。牧師は一族のかかりつけ医にとある秘密を聞かされてから、徐々にこの一族の恐るべき正体を知ることになる。

フォークホラーの火加減はずっと弱火。最後で一気に強火になる。この物語は牧師がしたためたものなので、最後まで見届けてはじめて民間伝承として完結する。
見終わって、「とある映画ぽい」と思った。(メリメの小説の発行を考えるとこちらが先行作品なので、○○ぽい、という感想は愚行。)
タイトルを言ったらネタバレなので伏せる。
結末について、勝手にファンタジー補正をしたいがどちらに転んでもアリ。
悲劇のもとで産まれた人間は、獣の本能に駆り立てられるのか、はたまた自分の猟奇性を獣のそれになすりつけているのか。伯爵の内面を掘り下げる要素がやや浅い。
常に落ち着いた態度で、でもちょっぴりビビリな牧師さんが好き。女性の水浴を覗き見する男に「恥を知れ!」と叱咤するも、自分もちゃっかり見ちゃうムッツリ。

蒸気機関車、立派な城、その内装、季節の移ろい、すっきりした森、拓けた土地、水浴の池、殺された女が纏うシーツ。リトアニアの小さな農村とその衣装。美術も高評価。

ソ連制作の『熊の婚礼』という映画もあるらしい。
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