Rita

福田村事件のRitaのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.1
日本で実際に起こった福田村事件。

1923年9月1日関東大震災から五日後、千葉県東葛飾郡福田村。朝鮮人に対する悪意ある流言飛語を信じた村人たちによって、香川からやって来た行商団9人が殺害される事件が発生する。

私たちが見ているものは本当に正しいのだろうか。当時の日本の国民性がはっきりと映し出されている。日本で云う"正義"とは。人間の恐ろしさや醜さが露となっている。疑うばかりか、村の人々が一斉に人殺しと化してしまう様子がとても生々しく描かれていた。

村に伝染していく死への恐怖。事件後の村人の様子でも自分で責任を負わないどころか自分は悪くないと信じているようにも思えて怖い。

1923年9月6日に起こった福田村事件。偶然、事件から100年後の2023年9月6日に観賞していた。この出来事を決して忘れてはいけない。今までに鑑賞してきた邦画の中でも一番の衝撃が走った作品でした。

この作品を見ていなかったら福田村事件の存在さえ一生知らなかったかもしれない。本当に知れてよかった。100年前の事件ですが、今でも問題視するべきこと。自分が村人の立場だったらと考える機会を与えてくれた森達也監督に感謝の気持ちでいっぱいです。

行商団の内のひとり沼部という男が言っていた「朝鮮人だったら殺してもええんか」この言葉が忘れられない。同じ人間なのに殺す殺さないと騒いでいるのは何故だろう。待てと言われて待つことを放棄したのはどうしてなのか。差別や集団心理、争いがどんなに愚かなことなのか訴え掛けられる。とてつもない緊迫感がスクリーン越しに迫り来る。
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