半兵衛

セクシー・ドール 阿部定3世の半兵衛のレビュー・感想・評価

4.2
性行為のとき人間の肌からあふれでる熱気や汗にこだわる菅野隆監督だからなし得る生々しいエロスの体感が、抑圧してくる男性の性社会から脱して自由に性欲を楽しむ女性のドラマと結び付いて作り物ではない艶かしい女性本能そのものが画面に刻み込まれる演出に息を呑む。そしてラスト、愛や性を心ゆくまで堪能する主役二人の美しさに心も体も揺さぶられる。

政財界の闇という普通の作家であればそこをメインにして描く題材なのに、監督の菅野氏と脚本の佐伯俊道は社会派気取りを捨ててそうしたダークな社会でも強く自分の意思を貫こうと生きていく女性のドラマをメインにしておりそれが他のポルノとは一線を画すことに。またそうした割り切りが女性の性の根源に近づけたことに繋がったのかも。

自慢のスタイルと日焼けした肌を晒す三東ルシアと端正なスタイルと酒焼けした声が性の化身キャラにぴったりな樫山洋子も◎、彼女たちがモザイクが入りそうなギリギリまで肌を出してエロシーンを盛り上げる様にも感動。

胡散臭そうなキャラを好演しながら殺害されたことを台詞で処理される石山雄大や、『日本の黒幕』のサブリンみたいなキャラをポルノらしく演じるパイカルこと江角英明のサポートも見事。

ビリヤードの穴を女性の体でセックスへと比喩していくラストの演出が素晴らしすぎる。

あと犯されそうになった三東を助けて家へ連れてきた樫山が、気取った料理ではなくおじやを差し出して一緒に食べるさりげない優しさに満ちた場面にちょっとした感動を覚えた。
半兵衛

半兵衛