フク

全身小説家のフクのレビュー・感想・評価

全身小説家(1994年製作の映画)
4.0
作家井上光晴の生前の姿を追いかけた原一男監督によるドキュメンタリー。
「ゆきゆきて神軍」の奥崎謙三ほどではないにしろ、井上光晴も深く知るほどに底の見えないぬかるみ的な精神の闇や濁りのようなものを強く抱えた人間なのだなと感じる。
晩年の彼と彼を称える小説講座の生徒達の生々しい関係性で作り上げられた小宇宙のような集合体があり、そこで井上は絶対的な存在として君臨していたりする訳で、本作はそこでのトリックスター•井上光晴の姿をメインに描かれている。
他者からの評価がその地位の意味の大きな部分を占める「大作家」という立ち位置と、独りのただの人間としての立ち位置との均衡に常に危うさを感じさせる作家という職業の業の深さを感じざるを得ない。
フク

フク