らっこたろう

正欲のらっこたろうのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.0
「水」に性的欲求を感じる主人公、少数派を認めず社会的な正しさを主張する検事、異性に嫌悪感を感じる大学生など、登場人物それぞれのストーリーをオムニバス風に投影し、やがて一つの物語になっていく作品。

LGBTQ、ダイバーシティ、多様性など謳われる中、誰にも共感してもらえない少数派の欲望や嗜好にもがき苦しみ、それぞれの在り方を表現した素晴らしい作品だと思いました。

ただ単に少数派が高らかに声を上げるのではなく、本作ではいわゆる普通の中で共存し生きていく方法が示されています。
マイノリティを強調するのではなく、マジョリティも理解しようとすることが重要でお互いのフェチズムのバランスが崩れたときに悲しい結末になってしまうため自情する心も大事。
誰一人取り残さない鋭い視点から描いた物語でした。

一般的でなければ「世の中のバグ」という訳ではなく、どこかには「繋がれそうな人」がいるということ。
ただし、共感せず一人でいる選択をした人もいて何が何でも認め、理解させる必要はないこと。
答えは一つではないことを教え、多様性を謳う世の中に対して社会風刺が効いた素晴らしい映画でした。

2023年56本目