Reno

ウィッシュのRenoのレビュー・感想・評価

ウィッシュ(2023年製作の映画)
4.8
11.17 舞浜 一般向け日本最速試写

100周年記念作品としては、ディズニーが大好きだからこそ、イースターエッグを抜きにした時、作品単体としての弱さ、至らなさを感じてしまう作品だったけど、愛は抱かずにいられない作品✨


●●まずは良いところ!●●

★ヴィジュアル&デザイン★
 節目の作品ということでまた新しい表現にチャレンジした映像は、とても美しかったです。光がとっても映える、リアルテイストと2D的な表現のバランス✨ロサス王国やそこに住むキャラクター達のデザイン、映画全体のカラーパレットなどはすごく好みで視覚的に満足感がもてる!
 特に王夫妻のブルー、ペールホワイト、薄めゴールドの組み合わせのロイヤルな感じが好みすぎて!!!二人の衣装大好き!!!

★ダイバーシティ, レプリゼンテーション★
 さすが今のディズニーだけあって、メインキャラクターの人種的多様性やジェンダーバランスなども当然確保されている。加えて主人公の親友は杖の補助が不可欠なdisabeldのキャラクターで、disabledパーソンのレプリゼンテーションもグレート!
 ちなみにこのアーシャの7人の友達はそれぞれ名前と個性が、白雪姫の7人の小人と対応するように設定されているそうです。
 中高年世代のお婆さんの願いが、船の船長だったり、細かい部分もさすが今のディズニーという感じで、ジェンダーステレオタイプやエイジズムを壊そうという意識が垣間見れてグレート!

★キーテーマ★
テーマそのものは悪くない。けど、それが上手にまとめられた優れた作品になっているかというと、そうではなくウェルメイドでソリッドで良くも悪くもクラシック。減点が多いわけではないけど、加点も多くなくて、予告等で伝わる以上でも以下でもない感じ。ノーマル。

でもね、「虚しい約束 もう頼らない」みたいなセリフがあって、そういう細かいところで核心ついてて良いんだよね。幻想を見せるイメージが根付きがちなディズニーが、ファミリー映画らしい暖かさはもちつつ、今一度現実の厳しさも伝えるところは良い部分だなって。

★ミュージック★
歌も良いものがある。もちろんとんでもなく良い歌が異常なほど多く、しかも物語との絡み方がパーフェクトなアナ雪ほどのレベルではないけど。私が好きだなと思えたのは、予告でもおなじみメインソングの「This Wish この願い」と序盤の王とのデュエット「輝く願い」、そしてエンドソングの「A Wish Worth Making かけがえのない願い」の三曲。

★100周年記念のイースターエッグ★
100周年記念作品だからこそのイースターエッグの数々!プロモーションの段階でも少し示されてたけど本編では、より直接的なイースターエッグ(というか最早クロスオーバー?)になっていてとても楽しかった!アナ雪の戴冠式にラプンツェルが参列してるとか、そのレベルじゃなくて、ピーターパンのオリジンやっちゃってるじゃん?とかマグニフィコ王って結局このまま将来的に魔法の鏡の中の人になることを示してるの?とか。アーシャがフェアリーゴッドマザーになるのは流石に既にリリースされてる予告や画像で察せられたけど。その他にもまさかのアニメーションスタジオ作品だけでなく、メリーポピンズへのリファレンスもあって胸が高鳴りましたね!!

★エンドクレジット★
 そして最後に伝えたい良いところは、良いのか悪いのか一番100周年記念作品らしいカタルシスを感じられたのが最高に素晴らしいエンドクレジットだということ!!!
 さっきも好きって書いたエンドソング「A Wish Worth Making」とともに黒地背景にキャスト&スタッフのクレジットが流れて、その左右に順番にディズニーアニメーションスタジオの過去100年の劇場公開長編映画のワンシーンを金の粉で表現したイラストが流れるというものなんだけど、これがベタで王道で、だからこそすっごく嬉しいしエモーショナルなんですよ!!!!やっぱり総まとめの作品ってこうでなくちゃ!!!!

 白雪姫から始まってファンタジアの弟子ミッキーとかダンボとかアラジンとかムーランとかスティッチとかチキンリトルとかどんどん進んでさ。各作品、大体一人か二人、描かれてるんだけど、Big Hero Sixから選ばれたのはヒロでもベイマックスでもなく、まさかのYokaiでしたよ!笑笑 面白すぎでしょ!確かにタイトルがベイマックスなのは日本独自だし、あのヴィランまあまあ人気だった気もしなくもないけど笑笑

 そして最後はストレンジワールドのあの名前は忘れたグニャグニャした生き物で終わるという笑 まあ順番的にストレンジワールドで終わるのは当然なんだけど、なんか最後にあんな人からかけ離れたデザインの子で終わるの面白いよね笑

 曲も本当良いんだよね。こういうディズニーのミュージカル作品で、劇中とは違う歌をエンドソングにするの珍しい気もするけど。今回音楽制作を担当したジュリア・マイケルズは歌手もしてるから、エンドソングは本人自ら歌っていて素敵でした!!✨しっとり感もあってね。日本語版でもこのまま流れるのかな?それともこれからいつもみたいに日本語版エンドソングの歌手発表?


●●さて、次は悪いところ!●●
残念ながら少なくない!!笑

★キャラクターの浅さ★
 キャラクターの描き込み不足がもたらすキャラの魅力不足とストーリーの漠然性。主人公アーシャも家族も友達もその他もみんなストーリーありきの存在で各々固有のドラマが表面的。
 だからこそ、アナ雪やモアナ、ラーヤ、ストレンジワールドなどよりも最近の過去作品よりドラマとして弱く感じてしまう。あまり好みではなかったミラベルにすら深みと密度のあるストーリーという面では負けてるように感じた。
 とはいえアマヤ女王は好きになったよ!ヴィランの妻でありながら、正しいことが何か自分で考えて必要なことをする姿は素晴らしかった!あとアーシャとその親友ダリアとかもね。

★ヴィランを用意した意義は?★
 唯一描き込みがしっかり出来ていると感じられたのがマグニフィコ王で、久しぶりの王道ヴィランでその良さはあるんだけどこの記念作品で久しぶりに王道ヴィランを用意した価値が感じられない。これなら、最近の傾向である邪悪な誰かとの
善悪の戦いではなく、自然など不可抗力への対処だったり、自分や他者と向き合い方の見直しの物語をしていた他作品達の方が、やはり今に相応しい前進したストーリーテリングに感じられる。キャラ個人の良さはあっても、作品への貢献があまり感じられないんだよね。またわかりやすい善悪の戦いに戻したのがただの後退のようにも思えて。

★マスコットキャラの虚無感★
 恒例のマスコット的キャラ枠であろうスターもヴァレンティノも想像以上に影が薄く、登場シーンの多さの割にそこまで上手く物語の中で活用されていない気がする。まあこれはオラフとかが珍しいだけで、今作に限らず言えることだから大した問題ではないけど。

★物語の力強さの欠如★
 総合的に物語が弱いというかシンプルというか漠然としているというか、、、
 これまで指摘してきたことの全てがここに行き着くわけだけど、100周年記念の大事な作品なのに、あんまり物語そのものの魅力が炸裂していないんだよね。テーマはすごく良い。願いを叶えるとは、願って終わり・他者に叶えてもらうことを期待するということとは違うんだよ、他者に頼って待っているだけでなく自分で叶えていかなきゃね、という少しリアルで厳しくも必要なメッセージ。
 All our dreams can come true, if we have the courage to pursue them. というメッセージを世界に広めてきたディズニー、でもその後半部分が(特に日本では)あまり周知されず都合の良い御伽話のようなメッセージになっていることがしばしばあるという話を思い出しました。だから、そういう他者頼りではなく自主前進をというテーマの必要性なくはないんだけど、ディズニーのコアファンからすると、それってこの2010年代から2020年代にかけて散々示されてきて、もう当たり前になってたつもりだったというのも正直な思いで、今作を見て、あ!そこをまた強調するのね!という既視感というかそれこそ前身のなさを感じてしまった。
 2010年代以降、マレフィセント等様々な実写再創造作品で過去の物語を内省し現代に合わせアップデートしてきて、もちろんアニメ作品でもアナ雪やシュガーラッシュ、モアナなど先進的な物語を出して、ディズニーはブランドメッセージを過去をしっかり更新してきたと思う。もちろん2000年代のティアナや魔法にかけられて等の時点でもディズニーの過去の精算的活動は既に始まっていたと思う。で、それは必要不可欠で素晴らしい結果を残してきたから、今作もその系譜として自然といえば自然なんだけどね。なんか今挙げたような作品達みたいにその時点での革新性とかは足りてなくて普通止まりに感じられたのが勿体無い。というか悔しさすら少し感じる、、

★パーソナルさの欠如★
 アナと雪の女王シリーズとかラーヤとかストレンジワールドとかミラベルとかが固有の輝きを持ってたのはやっぱり、各作品キャラクターの固有の人間ドラマが充実していて良い意味でCharacter Drivenだったからだと思う。だからすごくパーソナルでエモーショナルな人生の物語になっていてそこが作品単体の完成度の高さ、現代性、愛着の持ちどころに繋がっていたんだよね。
 今作は100周年の節目として大事なテーマに向き合ってはいたけど、結果的にそのディズニー作品の根源的要素にフォーカスしたことにより話がパーソナルから離れすぎて漠然とした、ある意味クラシカルな昔話的寓話的物語になってしまったのかもしれない。
 愛は持てるけど、これまで上げてきた作品に向けられる愛とは違う、熱愛でも偏愛でも敬愛でもなく、博愛的な感じ?

★テーマの着地の強度不足★
 あとそのテーマのこの映画内での着地が少しぬるいというのも、良い作品だった!って言い切れない理由の一つかな。願いを他者に叶えてもらおうとせず自分で叶えようと行動しないとって話だけど最終的に、預けた願いをヴィランから取り戻して、それでハッピーエンドだから願いを叶えるために自分で動いて生きていくっていう部分が大してフィーチャーされず、主題なはずなのに、サラッと消えていくような流れ。
 おじいちゃんが願いを叶えられたのは良かったし、100歳のキャラに「さあ、これから願いを叶えるために音楽家として努力しなさい」という展開になったらさすがに酷すぎるし、求めてないけど
単におじいちゃんがみんなと仲良く楽しく音楽やってそれだけだと、それこそ単なる願えば叶うという単純で都合の良い展開に近い場面が結末の印象として強くなって、それで良いのかなって。笑
 しかも100歳ってまさにディズニーカンパニーそのもののメタファー?だろうけど、ディズニーの場合、個人じゃないから今後も末長く続くわけで、(先が長くはないであろうとか言ったら少しひどいかもしれないけど、)100歳のおじいちゃんに重ねて良いのかな?普通、これからも前進して成長して世界を照らし続ける若き主人公アーシャに重ねるべきじゃない?これからもディズニーカンパニーはよりよく変わり続け頑張っていきます!みたいにしなくて良いの?っていう笑 まあこれは大きく気にならないから良いけどさ笑



●●終わりに●●

ということで、100周年記念作で、タイトルとファーストルックが解禁された時からずっと楽しみにしていた作品!舞浜という国内で最もディズニーのお祝いに相応しい場所で見れて素晴らしい1日になりました!!
足りないところもたくさん感じてはしまったけど、それでも結局言いたいのは悪い作品ではないし、普通に楽しめるディズニー映画!!なおかつ100年の節目としてディズニーからの楽しませようという想いを感じられるイースターエッグも盛りだくさんで見て損はない作品!!
世界により良い影響を与え続けて、心に彩も与えてくれているディズニーカンパニーが好きなら、ぜひ見てほしいです!というか好きな人はそりゃ見るよね!笑

★新たな100年を歩むディズニーへ★
この一年、実写リトルマーメイドと今作を100周年の目玉と捉え、自分自身も期待が持てる作品だったから全力でプロモートしてきたわけで、それがこうして二つとも終わったのは感慨深いです。蓋を開けてみるとに作品とも失望する作品ではなかったけれど、想像の範囲内で止まっていて、嬉しいサプライズみたいな弾ける感じはなかったけど、それでもこの楽しみにしてた気持ちと見て感じた良さはかけがえのないもので十分、ディズニー愛を再確認できるものでした!!

確かにこの一年は、せっかくのメモリアルイヤーなのに、劇場公開作品を振り返ると、小品と言わざるを得ない『ホーンテッドマンション』、ヒットはしたけど私としてはそこまで評価高くない『マイエレメント』、普通に良い作品だけど思ってたより革新性がなかった『リトルマーメイド』、完璧ではなかった『ウィッシュ』、数字的にも内容評価的にも低い『インディジョーンズ』、マーベルブランドも『クアントマニア』と『マーベルズ』は低評価、『ガーディアンズオブギャラクシー』のみ安定した評価と数字、というラインナップで勢いに欠ける一年だったなと。
 実写ライオンキング、トイストーリー4やアナと雪の女王2、アベンジャーズ完結編、スターウォーズ完結編などとてつもなく華やかなラインナップかつそれぞれ数字的にも稼いでいた2019年の方がよっぽど華やかで強さを感じる年だったよね。まあもちろんコロナ等で2020年以降の今は前提として、業界全体的に前みたいな金銭感覚ではいられないのもあるけどさ。

 しかも組合のストライキゆえに100周年記念日のあった10月前後という大事な時期も大したプロモもイベントもできず過ぎ去り、ストライキはかなり長期戦でした。ディズニーというカンパニー自体、クリエイターやアーティストに対してフェアな姿勢を用意できなかったのだというマイナスな印象も受けて、そこはむしろ大事な年の大事な時期に自分たちの顔に泥を塗っているような気もして残念な気持ちに。

 さらに101年目の新たな始まりとなる来年は実写白雪姫も延期でいなくなったから、ディズニーからは12月に実写ライオンキングの前日譚となる「ムファサ」とまだ内容未公表の新作アニメ映画、ピクサーからはインサイドヘッド2、マーベルからはデッドプール新作一本のみ、というかなり寂しいラインナップ。ウィッシュの凡作寄りな結果と、この来年のラインナップを思うと、少しディズニーの行く末が心配な気も、、、もちろん大きくは心配してないけどね!!ちょっとまた停滞期に入ってきたのかなみたいな懸念かな。まあまた浮き上がるの待ってます!!私はずっと愛し続けますし!!

I love Disney !!! ディズニー Forever !!!
Reno

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