「周りが暗くなって
スクリーンにサーカスや芸人が映るんだ」
「暗いのなんて嫌だよ」
「映写機って機械が大きな光を出すんだ
その前を１秒間に24枚の写真が流れる
人間の脳はそれを捉えきれず映像と認識する
それが〈モーションピクチャー〉だ」
「すべての出来事には理由がある」
「このシーンを撮らないのか？」
「暗過ぎる」
「芸術は麻薬だ
俺たちはジャンキーだ
わかるぞ 家族と芸術の板挟みだ
心が引き裂かれる
芸術とは大きく開いたライオンの口だ
お前の頭を噛みちぎろうと開けている」
「映画でママを慰めるんだ」
「出来ないよ 明日は新作の撮影初日だ」
「趣味より家族が大切だ」
「趣味って言わないで」
「I don’t make movies」
「Everybody makes movies in California」
「男の写真がいっぱいだね」
「セクシーでしょ？」
「キリスト以外はね」
「キリストもセクシーよ」
「どんな姿だったかは分からない」
「でも人間の姿だったわ
女でも老人でもハンセン病でも良かったのに
若くてハンサムなユダヤ人の男の姿だった
あなたみたいにね」
「Did you find Jesus？」
「In jewelry shop」
「君よりうちのサルの方が利口だ
反ユダヤの大馬鹿野郎だ
でも画面では美麗だ」
「なぜ俺をあんな風に撮った
あのスクリーンで俺は
まるで黄金の何かみたいだ
俺はあんなじゃないのに
手に入ることのない何かみたいだ」
「🚬」
「初めてか？」
「吸うとどうなる？」
「人生はままならないし
自分は無力だってことが分かる」
「それで良いんだ」
「俺が泣いたことは誰にも言うな
俺とお前の間の秘密だ」
「約束する
どんな映画を撮っても言わないよ」
「パパとママの長い関係に
"THE END"は無いんだ」
「よく覚えておけ
地平線が下にあると面白い画になる
地平線が上にあっても画は面白くなる
だが真ん中にあるとクソつまらなくなる」
