イワシ

Butcher, Baker, Nightmare Maker(原題)のイワシのレビュー・感想・評価

3.8
面白かった!血塗れの姿で乳房を晒しながらジミー・マクニコルに縋りつくスーザン・ティレルにかなり嫌悪感を抱いたけど、ぜんぜん序の口だった。最後の最後までやめてほしいことしかしない。『断崖』以上に牛乳が活躍する牛乳映画でもある。口の周りを舐めるな!

朝食を作るスーザン・ティレルの包丁の音と室内でバスケのドリブルの音を響かせるジミー・マクニコルが映る冒頭、後にバスケの奨学金制度で大学に行けることを喜ぶマクニコルと偏執的な庇護欲を見せるティレルとの対立をアクションと音響でしっかり予告する。また冒頭からマクニコルは写真の被写体としてのイメージが連続して映されるが、両親、ティレル(顔出しパネルという挿げ替えの暗喩)、彼女役のジュリア・ダフィとマクニコルの写真の所有者が同時に本人も所有するかのような演出。被写体としてのマクニコルに関して言えば、やたらと彼の裸体が映るのも特徴的。ティレルから性的な視線を注がれるが、映画自体がマクニコルを性的対象として見ているかのよう。ボー・スヴェンソンのホモフォビックな言動はこの視線を誤魔化すために要請されたようにも思える(どっちにしろ差別的だが)。被写体であり続けたマクニコルがティレルに対する疑惑を抱き始め、その疑惑の表面化のきっかけのひとつとしてフリースローの主観ショットがある。睡眠薬入りの牛乳を飲まされたことによるぼやけた主観だが、同時にカメラとしめの役割を獲得する。後に彼はティレルの覗き見主観の時と同じ行動をとる。ティレルとの対決では背中を切りつけられたマクニコルが正面を向き、内側からの切り返しになった瞬間に決着がつく。カメラとカメラが向かい合う戦い。スヴェンソンはティレルの正体を見誤り彼を犯人とし銃を向ける。ピントの合わないカメラとして刑事と被写体であること辞めた少年、そしてshooting。
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