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ippoのtsのレビュー・感想・評価

ippo(2022年製作の映画)
3.9
おもしろい。柄本兄弟も演じた『ゴドーを待ちながら』さながら登場人物も観客も何かが起きるのを待ち続ける脚本、映画。

1. ムーンライト下落合
つかないテレビに向かって放たれるリモコンの赤外線(人間には見えない。これは映画ならでは)、月明かりに照らされるチーカマ。久々に会う人とはなんとなくその人自身の話よりそこにいない共通の知人の話をしてしまう。けどこの夜はふと思い出して元気になったり落ち込んだりする記憶になるんだろう。

2. 約束
中盤は軽いホラー。共通言語があるようでない兄弟が金がない明日への不安を曇り空の下吐き出し合う。一緒に空を見上げたとき、その不安は和らぐ。

3. フランスにいる
とにかく高良健吾の「なる、ほど」が素晴らしい。人といるときの退屈は退屈じゃない。お互い構ってほしい感じが愛おしい。途中からテープに日付だけが吹き込まれてるの、安直だけど河原温の日付絵画みたいで怖い。あとyumboの『これが現実だ』を久々に聴こうと思った。

監督舞台挨拶での「日常にある不安が3作に通底する空気感、テーマになってる」(うる覚え)という言葉で結構スッとした。繰り返すけど、覚えてるか覚えてないか、二人のうちどちらかが覚えているかどうか、くらいの記憶がひとりでいるときの不安をちょっと大丈夫にしてくれる。そんな時間の映画。
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