『ippo』に投稿された感想・評価

戯曲作家・加藤一浩の短編脚本3本を、柄本佑が監督。一場の会話劇で、何も起こらない。それでいて不条理のようなオチ。第1話「ムーンライト下落合」は、アパートの二人の男の会話。ハナシが途切れ、テレビのリモコンを手にするが、テレビは点かない。電池を買えても、叩いても無反応。二人の意思疎通の遮断を象徴しているかのようだ。外の出ると、大きな満月が出ていた。撮影の四宮秀俊曰く。「二人の男が月の美しさに気づくまでの時間」。
第2話「約束」は屋外の公演が舞台。団地に囲まれた児童公園。2つのベンチ。兄と弟の会話。弟は前日に会社を辞めているが、作業着を着ている。常に動き回っている兄(渋川清彦)と、ベンチに座る弟(柄本時生)兄の言葉に、瞬間的に悪魔的表情を見せる弟。そして隣のベンチには作業服で俯いたままの男が座っている。弟のドッペルゲンガーか。兄弟が立ち去ると、いつの間にか分身も消えている。第3話「フランスにいる」はフランスのある画家のアトリエ(撮影は劇団乾電池の倉庫)で、画家(加藤一浩)が青年(高良健吾)の肖像画を描こうとしていた。しかし、なかなか筆を動かさない。その筆は線を描くまでの時間。どの作品も多様な解釈ができるし、会話の暗喩や、芝居を楽しめるが、観客を選ぶ映画でもある。

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