BC

彼方の閃光のBCのネタバレレビュー・内容・結末

彼方の閃光(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

原爆・ゲイ…
クライマックスからラスト以外はモノクロ映像。
シビアな作りで内容的にも笑い要素はほとんどないので
なかなか配給がつかなかったのも納得。
期間限定公開とはいえTOHOシネマズ系でかかったのは
眞栄田郷敦が出演している年明け公開の漫画原作の大作が東宝系だからテコ入れなのかしら?
理由はどうであれ、画で語るような作品なので大きな映画館で観られたのはラッキーでした。

主人公光役の眞栄田郷敦は非の打ち所のない美形だし、繊細な演技も上手い。
だけど、漢を感じる面はなく、存在感は薄い。

主人公と同行する役の池内博之は渡辺謙ぽくなってきているな。
昔は短髪でワイルドなだけだったけど、今は良い意味で不良中年的な不器用な渋みが出てきて良い年齢の重ね方していると思う。

沖縄の現地人役の尚玄は台詞回しはたどたどしいので出番多い役だとそれが目立ってしまいがちだけど(近年の映画では『赦し』とか)、
この作品のようにずっと出る役ではなけれれば、却ってその拙さが味になるよね。
言い争いになる重たい場面でもギスギス感が少しは和らいで観やすくなるから。

主人公の50年後の加藤雅也は一瞬田中泯に見えたな。
最後の章の正味30分ぐらいの登場だったけど、
彼が話すだけでその世界に引き込まれるようだった。
演じているというよりもその場に普通に役を存在させているというか、本当に山で暮らしてきた人のようで。
やっぱり50年経ってもゲイなんだけど、たまたま恋愛対象が異性ではなかっただけなんじゃないかと思わされるほどで、いやらしさがないんですよ。
加藤雅也は40代の時に10代の役を演じたり、50歳前後の時に30代・60代の役を演じたり俳優としては年齢不詳なタイプではあるけど、
この作品では今現在60歳で70歳の役だったけど、すんなり観れました。

70歳の光に色が見えるようになるクライマックスは急に鮮やかなカラー映像になるのではなく、
モノクロから大木の葉や小花の色がパートカラーのように一色がついてから
全てに色が展開していく映像の見せ方が素晴らしかった。
それからラストへの回想を含めたシークエンスが
混沌とした次元を解き放つような未知なる希望に感じられて良かったです。
BC

BC