あい

彼方の閃光のあいのレビュー・感想・評価

彼方の閃光(2022年製作の映画)
5.0
感性を刺激される絵画や音楽のような映画。
”色”の演出と”音”の表現で、主人公「光」の眼差しの変化と心の移り変わりが切なく強く響くから、光と同じ目線で絶望と希望に触れることが出来る。
人の生々しい憎悪や葛藤や脆さを見せられた後、生きる意味のようなものに辿り着くそのバランスが絶妙。
未来の描写の過酷さがリアルなだけに、それでもなお豊かな時間を作ることを諦めていない暮らしが、優しくて儚くて美しくて、過去の見え方が変わる奇跡のセリフが心を掴んで離さない。
なんと言っても画力。今まで感じたことの無いそのチカラに完全にその世界にワープしてしまう。
眞栄田郷敦がそこにいることが芸術性と説得力を増していて、強烈にモノクロの画が記憶に残る。
長崎も沖縄もありのまま堂々と画に収まって彼と重なり絵画のように映るかと思えば、撮影の画角や距離感に引き込まれてまるで光の傍にいるような錯覚になり、光が辿って行く”戦争”という不毛な地獄でさえ、もう他人事ではなくなってくる。
物語の内容はずっしり受止めなれけばならないことが多いけど、鑑賞後はなんとも清々しく、この世に存在する制限や強制、差別、偏見、常識など、私の嫌いなもの達を生きる上で全く意味の無いものと断言してくれるような自由を光から感じる事になった。
心の中で育てたい作品。こういう映画があってもいいと思う。
あい

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