カーネル

彼方の閃光のカーネルのレビュー・感想・評価

彼方の閃光(2022年製作の映画)
4.3
2024年、鑑賞1作目です。
価値のある一作でした。
今だからこそ観てほしい。お薦めです。

〝だめだ。理由なんてない。理屈じゃないんだ〟これにつきます。

硬質なイメージがあるけど実は柔らかくて優しさに満ちていますよ。
映像がとても綺麗でした。
フォトグラフィック的。
モノクロの素晴らしさを十二分に発揮している作品です。
それなのにモノクロであることなど忘れて没頭しました。
目が見えなかった光(眞栄田郷敦)が手術を受けて目を開けると色々なものが見えるのですがそこは………
そして後年、老域に達した光(加藤雅也)が得た素晴らしい世界は過去にも広がりを見せるのです。本当に上手く紡いだ物語だなぁ、と思います。

長崎の原爆や激戦の沖縄をテーマに物語は進みますが、そこには純粋な光とどこか危うげな友部(池内博之)と強く哀しい詠美(Awich)の人間模様が混ざり合います。
そして〝沖縄の声〟としてのガイド糸洲(尚玄)の存在と役割は大きかった。彼の放つ台詞にはとても力がありました。フェンスのある浜辺で彼が語る車の前に寝転んだお婆の話には思わず涙してしまいました。

物語は三部構成です。
とてもわかりやすい。
でも、〝わかるとかわからないとかではない。自身がどう思うのか〟なのだと。
前半で友部にこう言わせたたのはとても効果的でした。これが結局はエンディングにつながり、心を揺さぶってきます。
その時の片桐(伊藤正之)の存在が色々な意味で大きく、かつ優しくとても心に残りました。
いや〜ほんとうに良くできている。




どっかでフライヤーを手にして気になってたんだけど、気づいた時は日比谷くらいしか行けるところがなくて、諦めてたらなんと近場でやってくれるというので狙ってました。
正直言って169分という長尺に腰は重かったのですが………結果、一度も時間を気にすることなく、当然睡魔とも無縁。
写真家東松照明の名前を見たのが鑑賞動機です。あと当然ながらキャスティングにも惹かれました。

眞栄田郷敦は『東京リベンジャーズ』やドラマ『エルピス』『プロミスシンデレラ』など見てますがマッチョ系若手イケメン枠としての認識でした。『ゴールデンカムイ』にも出てるし。
しかし今作でイメージが変わりました。
この映画が彼の初主演映画なのですが、
私のように変にバイアスかけてこの映画をスルーしている人もいるかもしれないと思うとなんか申し訳ない気持ちです。
目ヂカラの強さはもとより、その中にせつない愛らしさも感じられます。
それは彼全体からも漂い、大人になった光の愛情を少し哀しげに放っていました。

池内博之は色気が増してきましたね。彼が演じる自称革命家というのが実に『蜘蛛女のキス』のヴァレンティンを思い出させました。(気づくと設定も似ていますね。)
彼は友部を演じるにあたりかなり早口を意識したそうです。確かに、捲し立てる胡散臭さと、それに反しての弱さが上手く出てました。そして彼の〝衝動〟も優しく演じていました。うん、良かったです。

そして〝沖縄の声〟としてのガイド糸洲を演じた尚玄は沖縄出身ならではの存在感でした。彼はロケ地なども事前に監督に同行して色々サジェスチョンもしたほど。
彼しか糸洲は出来なかったと思う。

友部に振り回される詠美を演じた沖縄出身ラッパーAwichは初めてお目にかかりましたがいやはや力強い!お見事です。

歳をとりパートナーと穏やかに過ごす光。光の老年期を演じた加藤雅也は、よく見ると眞栄田郷敦と似てるんです。特に力はあるのに優しげな眼が。物腰の柔らかさも通底してました。何よりカッコいいし!!

そして名バイプレーヤー伊藤正之!
きっと名前では分からなくても顔を見たら多くの人が〝あ!知ってる!!〟となる人です。が、こういう役は珍しいです。(どんな役かは言わなーいw)
もう〜たまらない!特に何するってわけじゃないのに、この映画の中で一番愛おしく感じました。オイシイとこ掻っ攫って行ったな〜っw

と長々とすいませんでした。

あ!特殊造形にまたしても百武朋!!

パンフレットというには分厚いものが¥2860(値段的にもパンフレットとは言えない………(泣) )しますが、中見が凄い!
写真集みたいです。しかも後半が活字みっしりのストーリーブックのようになっています(脚本台本ではない)ので、これで何回も反芻出来る〜w
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