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アシュカルのmmntmrのレビュー・感想・評価

アシュカル(2022年製作の映画)
4.6
無目的に自然を切り取る場としての廃墟と、狂信者の共鳴」として鑑賞した。

鑑賞後の率直な感想は「よくわからない」だった。

ただ、映画を撮るのが上手い監督だなとは思った。
ショットはバチッと決まってたし、音の入れ方も質感も良い。色調も、廃墟の無機質さと炎の力強さがよくコントラストされてて美しかった。

不思議なほどに、廃墟のもつ無言の魅力が作品全体に力を与えてた。

Q&Aで「廃墟ビルも主人公」と述べてたらしいから、廃墟について考えることも作品を評価するにあたって必要な工程だろうとおもう。

別に自分は廃墟を身近に知っている訳でもないけど、敢えて言うなら、廃墟の何が良いって、ただ意味もなく自然に開かれてる場であるというところだと思う。

かつてはなんらかの目的を与えられ建てられたものの、現在では無目的で無機質な建造物としてそこに在る。そして、ただ街並みをフレームし、空をフレームしてる。(作品のジャケットをみても廃墟のフレームが印象的)

少なくとも本作では、廃墟と焼身自殺が何かしらの関係を持っていることは間違いない。どう関係してるのか。

連続殺人の犯人や被害者達は、何も語らない。
炎を纏って朽ちていく。残るのは焼身と灰のみ。

彼らはラストシーンで顕著なように、炎に対して恍惚として理性を失い身を投ずる。

廃墟に溢れたチュニジアという街並みが、そこに住む信心深い人々の一部を(狂信的な人々を)、無目的さとか虚無とか無機質に羨望の念を抱かせたと考えることも出来なくはない。

特に犯人の信心深かさは若干ではあるが強調されてた。検察の漠とした推測の通り、彼らは殉教者たるべくして焼身した可能性は高い。

焼身し朽ち果て灰となることで、彼らの信仰心が満たされる論理があったのかもしれない。想像は容易い。

それでも多くの謎を残したまま終わってしまった本作は、監督の抱く、捉えきることのできないチュニジアの観念を表しているのかななんて思った。
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