むーん

あしたの少女のむーんのネタバレレビュー・内容・結末

あしたの少女(2022年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

コールセンターに勤務する少女が自死に至るまでの過程が描かれる前半と、それを捜査する刑事の視点から資本主義社会の歪みが浮き彫りにされる後半とに分かれる。この構成において一貫されているものは、責任の所在と憤りについてだと思う。彼女の職場において横柄な電話を入れてくる顧客、本社との板挟みになりながらも研修生を統括する立場にあるチーム長、彼女を推薦した担任とその背後にある学校、官庁--そのすべての関係者に自分の立場があり、仕事があり、他人への憤りがある。その外側には社会を醸成する資本主義の構造があり、それを端的に象徴する〝数字〟による結果から割り出された成績の表が彼らの行動を支配している。この作品が良いところは、これを捜査する刑事自身もまた仕事人であり、その社会の文脈からは等しく逃れられていないという点を明示しているところだ。自分が社会に所属していることそれ自体が構造への加担であるとすら思う。だからこそ、まずは声を上げることから始めなければならない。そんな想いを抱かされる、切実な映画だった。
むーん

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