きょん

生きててごめんなさいのきょんのネタバレレビュー・内容・結末

生きててごめんなさい(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

・今年は邦画を色々観ようかなと思っていて飯島寛騎さんが出てるのでたまたま観てみた(想像よりもずっとチョイ役だったので笑ってしまった) で、完全に穂志もえかさんにメロメロになってしまった… ボサボサの髪とずるずるのお洋服で真っ昼間から出歩く"まとも"じゃない莉奈の姿が、穂志もえかさんの幼いような大人っぽいようなアンビバレントさのある雰囲気にマッチしていて最高だった 莉奈はともすれば「関わりたくない」「嫌い」になってしまいそうな(というか身近にいたら絶対なってしまっている)存在だけど、作品全体を通してその奥にある強さみたいなもの?をちゃんと感じさせてくれたことにめちゃめちゃ感動してしまった あと修一がキレてばーっと喋った後慌てて謝ろうとした時、ぐちゃぐちゃの布団から漏れてくる莉奈の「もういい、です」というセリフがあって、この付け足された"です"が、莉奈の中で修一に対する何かがポッキリ折れちゃった瞬間なのかもな〜っていうリアルな空気感で良かった 1番好きなシーンかも
・莉奈が修一に寄りかかって甘えてるのは見れば分かるんだけど、あれだけ世話を焼いて何もかも許してる修一も莉奈に依存してることがちゃんと分かるから、黒羽麻璃央さんの演技ってスゲー…になった あと黒羽麻璃央さんの手がでっかくて良かった(莉奈の頬に手を添える仕草がめちゃめちゃセクシーだったため)
・松井玲奈さんってビルドの夏映画以来なんだけど今こうなんだね 修一の心の大切な部分にすっと踏み込んでくるミステリアスさも、修一ないし莉奈とは到底交わらない"社会人っぽさ"が滲むのもすん〜ごく魅力的なキャラクターだった
・作中では一貫してビジネス書が他人の手でPCに打ち込まれ、文芸は本人の手書きで書かれていて(修一が左利きなのが社会通念との乖離を感じてまた良かった)、効率で対比になってるのが面白いな〜とか思ってたんですけど、終盤に相澤さんが修一の原稿を投げ出して「手書きやめてよ 読みにくい」と吐き捨てる裏切りがかなり面白かった 手書きに代表される"生産性のなさ"が許されるのはその人に才能があるからで、それが修一に許されないことを通して暗に修一の存在価値が否定されている気がして… また、この辺は莉奈の生き方とも繋がっていて、修一の「俺は莉奈に憧れていた」というセリフに説得力を持たせていると思いました 莉奈にゴーストライターがついて、莉奈の生きづらさが共感を集める道具としてビジネス書的に消費されていくのも、莉奈自身はそうして抽象化された生きづらさに共感することができない(トークショーのMCに終始ハマってないあの表情…)のも、"修一が憧れた莉奈"を際立たせていたね
・夢も仕事もあるのにどんどん空回りして"ダメ人間"になっていく修一と、夢も仕事もない"ダメ人間"だけどとにかく生きて生きて、その先で少しずつ成功していく莉奈の単純な対比でもあるんだけど、莉奈が掴んだそれって果たして本当に成功なのか?とか、それに憧れてた修一に莉奈の姿はどう映ってるのか?とか、色々考えたりして面白かった〜 観て良かったです
きょん

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