売捌せば善し

零落の売捌せば善しのネタバレレビュー・内容・結末

零落(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

2024年 34本目

重い。けど意味のある重さだったから噛み砕いて見る。
モノづくりをする薫の苦悩と葛藤を軸に話が進む。
何をしても気分が浮かない時の周囲の評判、同級生、親からの連絡がよりキツくなる。黒い海を差し込むのは気分の顕れとも取れるし、もしかしてこのカットは徐々に前のカットから続きを映してるのかなと思った。徐々に白っぽくなることがモチベーション然り漫画への足掛かりの顕れになってるように見てた。

良くも悪くも理想妄想を押し付け合う夫婦感。感情移入したのはMEGUMIの役で、可哀想が正直なところ。薫を動かしたのは「あなたはあなた」と言い切り突き放す人だったけど、彼女は違う優しさだった。

途中のアシスタントがクソみたいな理由で家に訪れる時。眼鏡に反射した光がコミカルにも映るし、人から離れた存在の目にも見えた。序盤の日が差して顔が真っ暗で見えなくなるカットを見て絵作りに拘った映画なのかなと思って見てた。写真が動いてるように思わせるところが結構多かったイメージ。

100円の価値のマンガよりも、外の世界にはもっと価値のあることがたくさんある
みたいな言葉、田舎者の自分は「ここつまんねーな」って言った地元の会話を思い出させた。見つけられてない自分がつまらない。
だから流行りのマンガを100円に値下げされるかを見るために毎日30分かけて古本屋に通う気持ちを持てる方に自分は魅力を感じる。

流行りのモノを否定して自分らしさを感じるモノを認める。けど自分らしさなんて見るもの感じるもので変わっていく。そして他人から見たそれは本当にその人自身なのか。それがたくさん集まって流行りというのではないか。そして、全員が自分らしくワガママに葛藤しているのではないか。
自分以外の目線で話が進んでいくような気がした。

本作が凄く流行ってるわけではないってのもまた皮肉。バケモノというレッテルを貼られてしまった薫は嫌いだけど、なんか考えてしまう作品だった。
売捌せば善し

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