Nana

マッチングのNanaのレビュー・感想・評価

マッチング(2024年製作の映画)
-
永山吐夢の(犯行に至る)美学や思想が描かれていればもっとおもしろく、立体的だったのかもと思いましたが、きっと映画のほう(本作)は輪花の視点なんですね。
(だから、映画を観ている私たちも、輪花が聴き得たことしかわからない平面の構造なのかと思いました。そのせいで多少不完全燃焼のような後味が残りますが)

小説はかなり俯瞰的な視点でむしろ永山吐夢視点とまで言えます。映画を観て小説を読むと、解像度が鮮やかに跳ね上がるので楽しかったです。

日本版「セブン」や「シックスセンス」を作りたい、みたいな記事を読みましたが、テーマやストーリーは違えど、たしかに殺害現場や廃墟の徹底した絵作り、湿度の高さ、主人公に降りかかる容赦のない不幸は、近しいものがあるのではとワクワクしました。
サスペンススリラーの正解は観ている人に「もう嫌!」と思わせることだと思うので、じわじわと不快感に蝕まれるような、湿度や悪臭の伝わる美術面はとてもよかったな〜という気持ちです。

「救いのない」系ほど、崇高なテーマ、ストーリーではないですが、「容赦ない」系です。細かい辻褄合わせにモヤモヤしても、その分、容赦なくやり切ってくれるので、「そういうもの」を感覚的に楽しむにはよいなと思いました。
Nana

Nana