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二十歳の息子のジョウのレビュー・感想・評価

二十歳の息子(2022年製作の映画)
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児童養護施設の子どもの自立支援活動をしているゲイの男性が、施設育ちで犯罪を繰り返してきた20歳の少年と養子縁組を結んで引き取るというドキュメンタリー。引き取り手の男性の責任感や覚悟の強さとか、少年の不器用さや怯えを孕んだ笑い方が印象的。
男性は、少年の罪を社会の問題として捉えていて、かつ、自分たち自身がその問題に加担しているのだと、加害者的な立場での当事者意識を持っている。自分たちが起こした問題だからこそ、彼に寄り添う必要があると。高島鈴さんの『布団の中から蜂起せよ』を読んだときに、「統合失調症になる人は、広い範囲を細かく見ようとするタイプが多いらしい」という話があったけれど、すべての社会問題に対して(大抵の場合においては加害者的な)当事者意識を持つべきだというスタンスは、まさに「広い範囲を細かく見ようとする」行為であって、それをしながら正気を保つというのは、正直言って万人に出来ることではないなと思った。社会に生きる大人の責任として、そのような振る舞いは倫理的に必要だと思うし、なるべく自分もそうありたいとは思っているのだけれど、でもそれは人間にとってはとても負荷のかかる振る舞いであって、その乖離は倫理的な「べき論」だけで埋められはしないから、難しい。全員が深く内容を検討できれば一番いいけど、実際の世の中はそうはなれない。でも、だからこそ社会の「建前」を変えていくことが大事なんだとも思う。施設育ちだからって差別しちゃダメだよね、くらいの共通了解があるだけでも変わってくると思う。
あまり説明的ではない作品だし、作為的にストーリーが作り込まれているわけでもないので(私はそこが良いと思うけど)、一緒に鑑賞した人は「理解が難しかった」と言っていた。前提となる知識を少しでも持っていないと確かに難しいかも。
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