みけ

愛と哀しみのボレロのみけのレビュー・感想・評価

愛と哀しみのボレロ(1981年製作の映画)
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舞台は第二次世界大戦前夜から20世紀後半にかけての、アメリカ・フランス・ドイツ・ロシア。それぞれの国で、親の世代から子の世代へと、物語は受け継がれていく。
それぞれに戦争の苦しみを味わった親たちは、子供の幸せを祈りつつ、物語のバトンを子供たちに委ねる。しかし子供たちもまた、それぞれに人生の苦みを味わうのである。
第二次大戦の悲惨さにもかかわらず、アルジェリア戦争・ベトナム戦争の勃発と、再び歴史は繰り返される。
それは、いつの時代も人間が、未来への希望を抱き、恋をし、そして現実の前に挫折するのと同じである。
これこそが本作のテーマだ。親子を同じ役者が演じていることもさながら、何よりもこのテーマを表しているのが、ラヴェルの「ボレロ」である。楽器は変われども、ひたすら同じリズム・同じ音を紡いでいくこの音楽は、まさにこの映画の世界観そのものだ。
いつの時代も、人間の苦しみは変わらない。人が変わらない以上、歴史もまた変わらない。それでも人間は、次の世代に希望を託するのである。
ラストの感動は、エッフェル塔の下でのチャリティーがあのように行われるに至るまでの、過去の重さに対する感動である。そして同時に、あの場にいた全員から窺える、未来への希望に対する感動である。
この映画は、重厚な人間賛歌以外の何物でもないだろう。

ちなみに、本作の邦題はとても気に入っている。
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