現れる小林

ゴジラ-1.0の現れる小林のレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
5.0
ストーリーもVFXも期待を超えてくる内容で、最近見た映画の中でぶっちぎりのナンバーワンで面白かった。好きすぎて映画館で3回、アマプラで1回見た。

細かいこだわりを盛り込みながらも分かりやすい展開、都市破壊シーンと人間ドラマのバランスなど、全てにおいて文句のつけようがなく(若干のご都合主義的展開などがあっても映画の世界に引き込まれているのでもはや気にならない)、何より監督の撮りたいものの押し付けという感じではなく、観客の期待しているものを百倍にしたような映像を見せてくれる点が素晴らしい。やはり山崎監督は類稀な才能を持っていると改めて確信した。

私事ではあるが小学生の時、この監督の撮ったALWAYSの2作目冒頭のゴジラシーンを見て以来ゴジラシリーズにハマって、ついでに街とか都市を破壊するシーンも好きになった。その後はひたすらゴジラが街を壊す絵を自由帳に描いたりジェンガやヤクルト缶で作ったビルにミニカーを当てて壊す映像をデジカメで撮ったりする少年時代を過ごしてきたので、自分の今の趣味嗜好の3割ぐらいは山崎監督によって決定されたと言っても過言ではない。あの時からずっと、いつか山崎監督の撮ったゴジラを見てみたいと思っていたので、今回やっと長年の夢が叶った。

映画の内容についてだが、まずストーリー展開や、映画全体を通してのテーマが今までのゴジラのシリーズの中で最も魅力的だった。「生きて、抗え」というキャッチコピー、作品を見る前だと特に何も思わないかもしれないが、映画を見た後だと、作品にこの上なくぴったりのフレーズだとわかる。

国のために死ぬことが正義とされた太平洋戦争の中で、戦いから逃げ生きて帰ってきたことに罪悪感を抱きながら過ごす葛藤と、さらに度重なる不幸の連鎖(無論、戦争とゴジラのせい)の中で一度は人生に絶望してしまう主人公の悲惨な感情がストーリーのベースにあるものの、最終的には生きることに前向きになり、自分の中で続いていた戦争を終わらせるという展開にかなり好感を持てた。人間対ゴジラというメインの構造を見失うことなく、同時に一人の人間の、自分の人生への向き合い方についても描いている秀逸な脚本だと思う。

これ以上いうとネタバレになりそうなのでやめておく。個人的に、ディザスター系映画(特にアメリカ映画)にありがちな、主人公の自己犠牲による解決を礼賛する展開が嫌いなので、ある意味真逆に位置するこのようなストーリーが気に入ったと言うのもあるかもしれないが、そういう細かい理屈抜きにしても、とにかく心に響く物語だった。印象的なセリフや感動的なシーンも多い。

CGは良いが人間ドラマパートはダメ、と言ったレビューが散見されるが、単に趣味が合わないか、早くゴジラ出てこい!という気持ちでいっぱいであまり人物に感情移入していないだけだろうと思う。素直な気持ちで見ていれば大いに感動できる内容だ。

俳優のキャスティングと演技も素晴らしい。ボロボロの神木隆之介の演技は圧巻で、黒い雨の中で叫ぶシーンは鳥肌が立った。浜辺美波や佐々木蔵之介、吉岡秀隆なども、昭和設定の雰囲気を壊さない風貌と演技で観客をストーリーに引きずり込んできた。

あとやはり山崎監督をリーダーとした時の白組(CG制作会社)の力は凄まじい。ALWAYSや永遠の0でも感じたが、VFXの強みや弱みの全てを理解している人が一番上に立っているからこそあのような高クオリティの映像が出来上がるのだと思う。

本当に素晴らしい映画だった。
シン・ゴジラは趣味が自分と全く合わず(貶しているわけではなく単に好みじゃなかった) 、3回見てやっと何とか好きになれたと言う感じだったが、今作は1回目から私の心のストライクゾーンのド真ん中を貫通した。好きな監督の撮った好きなシリーズの映画だから大いにフィルターがかかってはいるのだろうが、そんなことはどうでもいい。とにかく道ゆく人全員におすすめしたい。今日の帰り道にも、街を歩く人全員を足止めして宣伝してきた。劇場公開されているうちに是非見に行ってほしい。