尾根ミリオ

ガールズ&パンツァー 最終章 第4話の尾根ミリオのレビュー・感想・評価

4.4
冬季無期限軌道杯の準決勝、継続高校の「白い魔女」にアンコウチームを陥落させられた大洗女子学園。
試合開始早々にその精神的支柱を失ったことに対する、各チームの特色とユーモアに溢れた比喩表現から映画を導入したのは巧みだなあ、と唸らされてしまいました。
前作からの2年半という歳月を埋めるための、ガルパンのお家芸によるセットアップ。
これで一気に映画館の中が「ガールズ&パンツァー」になったように思えました。こういう空気作りは大事ですよね。

またその狼狽する生徒たちに生徒会長が「負ける前から負けててどうするのー?」と諭すシーンには同日公開映画の猪木さんの名言を思い出して、少し胸が熱くなりました。きっと完全なる偶然だとは思いますが。

肝心の試合自体のクオリティは安定の高品質であり、「ガルパンブランド」を改めて思い知らされるような内容でした。
スクリーンの中だけではなく、戦場となった雪山の360°から砲撃音と滑走音が聞こえてくる臨場感には鳥肌が立ちっぱなしでしたね。
これぞ、劇場で観たくなる映画。制作陣の技術と強さを感じます。

試合の展開としては「アンコウ」から着想を得た作戦で大洗女子学園が徐々に活路を切り開き、今大会のダークホースと目された継続高校を優勝候補である大洗女子学園が押し切る、という幕引き。

個人的には、アンコウチームを沈める殊勲打を放った「白い魔女」の弱点が試合の中で徐々に明白になっていくのが好きでしたね。
これだけの大仕事を平然とやってのけるなんて、どんなに恐ろしい戦力なんだ…というのはミスリードで、彼女だってひとりの高校生でした。
それでいいんですよ。弱いからこそ強さが光る、その逆もまた然り。非現実的世界でこそ光るリアル、それこそがガルパンの生命線だと思います。

今作で特筆すべきは、徹底してアンコウチームの露出を削ったことだと思います。
個人的には、もっと解説や戦闘描写の補足などで頻繁に出てくると思っていたんですよね。
誤解を恐れずに言えば、やはり「ガールズ&パンツァー」は大洗女子学園の中でも、アンコウチームを軸にした物語ではあると思います。
だからこそ決勝戦というラストゲームの前に、大洗女子学園の他の生徒がアンコウチームを欠いた中で成長し、自覚し、奮起する。
この闘いは通過儀礼として必要だったと思いますし、かと言って第一試合だと意味合いが軽くなるし、決勝戦だと重くなるんですよね。準決勝のこのタイミングしかなかった。制作陣の見事な采配だと思います。

いやはや、上映初日に見る甲斐のある映画でした。
かくいう僕もガルパン初心者です、まだまだ間に合います。気になった方は是非ともまずは第一話だけでもチェックしてみてください。ガルパンはいいぞ。
尾根ミリオ

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