ぼたん職人

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2022/23 ロイヤル・オペラ 「アイーダ」のぼたん職人のレビュー・感想・評価

5.0
新年を迎えて7日目。早くも今年一番となるであろう作品に出会ってしまいました。映画ではないですが。

現代版『アイーダ』
全幕圧巻です!これにはやられました。

豪華絢爛な古代の演出ではありません。象さんの行進もありません。

軍国主義の仮想国家での物語。
演出のR.カーセン。この作品で歴史を作りました。
音楽に合わせた衝撃的な演出は斬新ではあるけれど、見事に現在と重なり合っていて納得のいくシーンに心打たれました。

舞台美術も冷徹極まりない。コンクリート打ちっぱなしの壁・輝くステンレスの大扉。王様の肖像写真にモノクロの戦争映像。

照明も真上からしか光が入らない閉鎖空間を表現。コンクリート壁に映る人の影に恐怖を感じます。

若い奴隷たちの踊り。晩餐会に向けてお皿やワイングラスを配膳するダンスに見惚れてしまいました。こんな演出もありなのだと。
表現の幅の発想は無限なんだと思い知らされるダンスシーンです!

エジプト王のシム・インスン。最高です!
権力のみで自らの地位を保っているニヤけた東洋人。隣国へのパロディーの様でした。

第2幕 第2場バレエ。ここで初めて踊りの登場。軍事祭にふさわしい軍事の踊り。
こんな演出もありなのか。

軍服姿での大合唱!こんなの観た事ありますか。凄すぎて言葉が出ませんよ。

大量核兵器倉庫内の様なラスト舞台。
愛を選ぶのか人類絶滅を選ぶのか。

こんな素晴らしいオペラを観ることができて光栄です。総合芸術の結晶を体感しました。ROHの観客たちも驚いたと思います。

こんなにも素晴らしい作品が何故短期間しか上映しないのでしょうか。
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