褒め河童

その夜の侍の褒め河童のネタバレレビュー・内容・結末

その夜の侍(2012年製作の映画)
1.5

このレビューはネタバレを含みます

やっと見れたこの映画
噂では、心が1ミリも動かないと聞く
どんなものかと興味本位で鑑賞

まずタイトルの「その夜の侍」とは何か
8月8日 お前を殺して、俺は死ぬ
なるほど、復讐実行の日は8のゾロ目、「侍」の文字は8画
そこから侍が来ているのだろうかと、鑑賞しながら考えていたが
8月9日 お前を殺して、俺は死ぬ
決行まであと2日

いや8日ちゃうんかい
全然ちゃうかった
あと、「俺も死ぬ」の方がしっくりくる気がするのは私だけだろうか

刃物を持ち歩き、無口で復讐の火を燃やし続ける主人公中村と、粗暴で力こそ全てな加害者木島
そんな2人のイメージから侍なのだろうか

まず、思ったのが妻の電話も無視するような男が、妻を殺されあそこまで復讐心に燃えるだろうか…
夫婦関係が描かれないまま、物語の始まりが事故から5年後であるおかげで、主人公に感情移入できないまま話が進んでいき置いてけぼり感がすごかった

あと、殺されかけたのに木島と自転車で二人乗りする星さんはどういう神経をしてるのだろう

脅され、乱暴された警備員は、家に転がり込んできた木島に対し「ご飯作りましょうか」「なんか、人がいるっていいですね」と、木島を迎え入れる
1番こいつがヤバいやつかもしれん

最後の最後まで中村と木島は対峙しないので映画自体の盛り上がりも少ない
会ったら会ったで「他愛もない会話をしたい」と、肩透かしを食らう
でも、結局殴り合う
なんじゃそれ
殴り合うシーンももみくちゃで、見てて物足りなさがあった
木島の1日の献立を記したメモを読み上げる中村
よく仕事しながらそこまでストーカーできたなと感心
「ここに君の全てが詰まっている」と主張するのは、さすがに言い過ぎでは

ただ、堺雅人と山田孝之の演技力はさすがで、それのみで最後まで見ることができた

妻の電話を無視したり、同僚の会話を聞いて笑みを浮かべる様を見る限り、自分から多く語らない人なんだろうと、中村の人となりが見える
あの時妻の電話に出ていれば、もっと話してあげていれば
そんな後悔が復讐に繋がり、平凡の外へ押し出されてしまう
お見合い相手に妻の作ったカレーの話をした時、自分が求めているのは、こんな平凡な日常であると気がついた
中村の気持ちの移り変わりが見られる重要なシーンである
ただ、ポッケから妻のブラジャーを出してくるのはいただけない…

木島はやることなす事滅茶苦茶で、生まれながらに平凡な日常とはかけ離れた存在
だからこそ、平凡の外へ放り出された中村と対比させているのであろう
しかし、彼もまた人並みに恐怖し、飯を食い、遊びにも行く
中村が木島に「君も平凡なんだ」と涙ながらに訴える
被害者加害者ではなく、お互いに1人の普通の人間
普通の人間とは、平凡を求める生き物である
平凡ではなくなった中村だからこそのセリフであり、また、平凡ではなかった木島だからこそ、この言葉が響いたのだろう

最後に大好きなプリンを頭や顔に乗せて潰すシーンは今まで見たどんな映画よりも、突飛なラストだった
これで泣ける堺雅人はさすがとしか言いようがない
「プリン食べちゃダメだからね」という妻の言葉を初めて受け入れ、今まで終わらせることができなかったあの日に終止符を打つ
妻との会話ももう終わり
平凡な生活に戻る決意の表れ
そんな意味のあるいい最後だったと感じた 
誰かがいる、それが平凡
人の目的や動機なんて、そんなもんだよ
そんなメッセージが込められた映画でした

あと綾野剛と安藤サクラは、この人こんな映画にも出てたんだランキングトップ2です
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