MitsuhiroTani

その夜の侍のMitsuhiroTaniのレビュー・感想・評価

その夜の侍(2012年製作の映画)
4.8
弱い人間がもっと弱い人間をいじめる、弱い人間だけで構築されるピラミッド構造。頂点と底辺の距離が極めて小さい三角形の頂点に立つ男、木島。偶然轢き逃げで人を殺めてしまったとか、無抵抗の女の子から財布を奪ったとか、小さなエピソードはあっても、本当は人を刺すことすらできない。
木島を取り巻く連中は皆、まるで彼の保護者のよう。
一方、小さな製作所ながら真面目に働く社長、中村。亡くなった妻との決別すらできない弱く女々しい自分を正面で受け止め、失った穏やかな日常を探し、その解を木島との対峙に見出そうとする姿は、とてもリアルで格好良い。
タイトルの意図は良くわからないが、雨の中での対決は「七人の侍」と並ぶ迫力に満ちたものであり、私には確かに二人が侍に見えた。
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