彼女がいったいなにをしたというのだろうか。
1人穏やかに信仰を拠り所として、静かに慎ましく暮らしていた依子の生活は、失踪していた夫が現れたことで次第に揺らいでいく。
側から見れば、怪しげな宗教への入信は、絶望的状況に見えるかもしれない。しかし当の依子が普通に暮らしていくためには、必要だっただろう。
おそらく彼女はそれに縋ることで、自分の感情を抑え、平穏な暮らしを演出していたのだと思う。
しかしそんな状況に、自分で少しでも疑問を持ってしまった瞬間、全ては絶望に変わると同時に彼女自身もまた解放されるのである。