日本映画史の総まくりとの見方もあるが、むしろ千代子という個人と
大女優「藤代千代子」としての存在が混合する一大回顧録として物語は進行していく。それはまさしく一個人としての存在と演じる役としてのイメージ、あるいは役を演じる者としての身体（役者的身体）という複層性を抱える「役者」という職業が、今敏監督が描き続ける虚実の境界を攪乱する手法によって、千代子による半生記はさらに複雑な構成で語られることになる。
時代を超え、役者的複雑さをも軽々と超えていく、非常に疾走感のある千代子の姿（語り）は、単なる懐古主義主義的なものではなく、常に先を見据えた開放感のあるものとして印象に残るだろう。
