これほどまでに静謐で、穏やかなコンサートがかつてあっただろうか。
坂本龍一の最後のコンサートを記録したライブフィルム。モノクロの画面の中で、痩せたからだを駆使しながら、一音一音手触りを確かめるように、丁寧に演奏する教授の姿から目が離せなかった。
当然、私はサカモトフリークというほどの者ではないので知らない曲目もあった(セットリストはすべてオフボーカル曲のみの構成である)のだが、途中で眠くなるようなこともなく、ただ心地良い音に身をゆだねる時間が流れていた。
ぜひ良い音響環境で視聴してもらいたい作品である。