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コカイン・ベアのRのネタバレレビュー・内容・結末

コカイン・ベア(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

自宅で友人1人と。

2023年のアメリカの作品。

監督はリブート版「チャーリーズ・エンジェル」の監督でもあり、女優でもあるエリザベス・バンクス。

あらすじ

1985年、ある夜、酔っ払った麻薬密輸人が自身の飛行機からコカインが大量に入ったバッグを持って、飛び降りてしまう。密輸人は飛び降りの際、ドアフレームに頭をぶつけて、意識を失います、そのまま落下死。一方、大量のコカインはチャッタフーチー・オコニー国立森林公園に落ち、そこに生息していたアメリカグマが誤ってコカインを摂取してしまったことで、非常に攻撃的になり、公園を訪れた人々を次々に襲い始める!

タイトルをはじめて観た時から「こりゃ絶対面白いやつ!!」とバリバリ観に行く予定だったものの、当時めちゃくちゃ仕事が忙しくて予定が合わず、違法薬物をタイトルに冠する危うげなタイトル作品ということで早々に劇場での公開期間が終わってしまい、残念ながら劇場で観ることが叶わなかった作品(ただ、必死の抵抗でパンフだけはゲット笑)なんだけど、この度遅らせばせながらU-NEXTのポイントを使い、配信で友だちと鑑賞。

ただ観る前一個不安要素があって、監督が女優でもあるエリザベス・バンクスという点。別に彼女が嫌いとかじゃないんだけど、彼女の監督作だった「ピッチ・パーフェクト」の続編が面白いところもあったんだけど、1よりも下ネタだったりのギャグがことごとく個人的にスベってて、なおかつ未見だけど、その後に公開されたリブート版「チャーリーズ・エンジェル」も割と酷評の嵐だったもので、今作も寒いギャグでとっ散らかっちゃってたらやだなぁと思いながら、鑑賞したんだけど…。

結論から言えば、なるほど!上映時間95分というタイトな内容でサクッと観たいものがちゃんと観れた大満足な作品でした!面白かったです!

お話はあらすじの通り、まず今作こんな悪ふざけみたいなタイトルとその内容ながら、なんと実話という点!まぁ現実では、冒頭で酩酊状態で自身の飛行機からトム・クルーズ並みにかっこよく飛び降りようとするものの盛大に頭を打って、そのままパラシュートが開かず、墜落死してしまう密輸人ソーントン2世という人物が実際にいて、やらかしたことと、そいつが持ってた大量のコカインが今作の舞台であるチャーターフーチーという場所を徘徊していたクロクマが食べちゃったという部分なんだけど、そのクマちゃんは今作のような状態にはならず、実際には脳出血、高熱、呼吸不全、腎不全、心不全などの合併症を発症し、死んじゃったらしい。ちょっと可哀想…。

で、本作はそんな「嘘から出た実」話を拡大解釈し、「コカインを食べたクマちゃん、名付けてコカイン・ベアがハイになって人を襲いまくる!」というそれ一点を映画化するという潔い内容となっている!

で、もうのっけからラリパッパ状態のコカイン・ベアが登場するんだけど、他の映画でハイになった人間よろしく鼻をフゴフゴさせながら、酩酊状態で木にぶつかったりとその登場シーンは割とコミカル!ただ、そこで侮って観てるとそこは本来なら獰猛なクマさんなので「すぐそこにいる!」とめっちゃ近づいてきて、その凶暴さを増した状態で襲い掛かり、地元のハイカーカップルの1人を早々に血祭りにあげる!

今作、割とグロ描写もサービス満点なんだけど、面白かったのがその描写ひとつひとつに趣向が凝らされており、エンタメに特化している点。

例えば、序盤、主要キャラの1人の子どもヘンリー(クリスチャン・コンヴェリー「ビューティフル・ボーイ」)がベアに襲われて木の上に逃げてるところを今作の主人公にあたるシングルマザーのサリ(ケリー・ラッセル「アントラーズ」)の一行に発見されるんだけど、まだ周囲にベアがいて、ヘンリー共々追い詰められてしまう。クマの特徴としてなんと木も登れる!ということで、ヘンリーに気づいたベアがヘンリーを追って木を登り始めるんだけど、隣の木にも一行の1人、動物愛護団体系の調査官ピーター(ジェシー・タイラー・ファーガソン「アイス・エイジ5 止めろ!惑星大衝突」)が逃げるために木に登っていて、そこから「早く逃げろ!」と声をかけてる状態で、ヘンリーが追い詰められて「あぁ、だめかー」とこちら側も諦めてたら、木に逃げる過程でコカインの粉を被ってしまったピーターの匂いを嗅ぎつけて、その匂いで一気に標的変更したベアがものすごい勢いでピーターが登った木を駆け上がって、なんと木上でもみくちゃになった末に逆さ吊りで襲われちゃう!

その犠牲のおかげでなんとか逃げ果せるサリとヘンリーのバックで哀れピーターはドサッと地上に死体となって落ちて、後から飛び降りたベアにオーバーキルされちゃうところとか決着のつけ方も良くてかっこよくも感じた!

あと、なんと言っても今作の白眉はその後の中盤、サリと行動を共にして、実はピーターに惚れていた森林警備員のおばさんリズ(マーゴ・マーティンデイル「ザ ・キッチン」)が重傷を負いながら、なんとか警備小屋まで戻って、そこで救急隊員を呼ぶんだけど(そこでの地元の不良集団を交えての悪趣味なサバイバル劇も見もの!)、隊員が駆けつけた時にはすべにベアによって死屍累々の状態!ただ、まだリズはなんとか助かりそうな状態だったので女性隊員がなんとか、別の男性隊員が襲われているうちに救急車に搬送して、慌ただしく逃げようとするんだけど、男性隊員も命からがら、なんとか救急車に乗り込めてやれやれ…と一安心してると後方からなんと全力疾走するベアの姿が!!そっからスピーディーでど迫力なベアと救急車との追っかけっこが始まるんだけど、リズも必死の抵抗で持ってた銃で撃ちまくるわ、ベアもめっちゃ走ってくるわでシーンとしてはめっちゃコミカルでとにかく楽しい!!そして、最後は野生の力でダイナミックに救急車にゴールイン!したベアに襲われちゃって、リズはストレッチャーにくくりつけられた状態で道路に顔から逝って死んじゃったり、他の隊員たちも救急車ごと木にぶつかって死んだり、手首食いちぎられた状態でベアに殺されちゃったりと全員死亡の大惨事、無事全員ぶっ殺したベアだけがふぅー!という一仕事やり遂げた感じで現場を後にするという、いやぁ、楽しいな〜!!

そんな感じで特に見せ方に工夫が凝らされてる本作なんだけど、人間側も広大な森林公園の中で、滝を見に出かけるディーディー(ブルックリン・プリンス「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」)とヘンリーのおませな子どもコンビやそのディーディーの行方を追う母親サリと案内するピーター、リズのグループ、そしてコカインの行方を追うギャングのグループとそのグループを追う犬好きの刑事と見た目から明らかな主人公気質のキャラがいない=誰が死んでもおかしくないという布陣も良い。キャスト陣を調べてて驚いたんだけど、ギャンググループの1人のエディ役がなんと「ハン・ソロ/スターウォーズ・ストーリー」で若きハン・ソロを演じたオールデン・エアエンライクが演じていて、そんときはまさに主人公!という感じだったのに、今作では全然主人公オーラがない地味な感じもあって、多分作り手も意図的に誰が生き残るかわからない状態を作り上げてる感じがあるよなぁ。

で、それぞれのパートを交互に描きつつ、クマに襲われる以外にもコカインを巡ってドタバタ劇が繰り広げられるんだけど、特に印象的なのはギャングのボス、シドを演じたレイ・リオッタ(「クライム・ゲーム」)!!

他の作品では割と悪徳警官役の印象が強い俳優さんなんだけど、今作ではグラサンに長髪姿のコワモテギャングで終盤に至るまで一貫してダーティーに立ち回り、私利私欲に走った最期はベアとその住処にいた2匹の小熊にはらわたを食いちぎられたまま、崖から突き落とされるという盛大な死に様で、今作が残念ながら遺作となってしまったレイ・リオッタのバイブレーターとして、数々のバイオレンスな作品群のキャリアを飾るラストが本作品という部分も込みで観ると感慨深い!

いやぁ、レイ・リオッタ良い俳優さんだったなぁ…。ご冥福をお祈りします。

そんな感じで全体を彩る80'sの雰囲気も良かったし、何より「もっとコカインないんかー!」とヤク中粉まみれのコカイン・ベアがとってもキュート(ただ、粉まみれから一転血祭りにあげた人間の返り血で血だらけになる顔は凶悪極まりないっ!)でそのユニークな特性上、最後は攻防の末で倒されちゃうわけではなく、のほほんと小熊と戯れて終わるラストも含めて、観てるこちら側までハイになれる!なんとも愛すべきジャンル映画でした!🐻大満足!
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