あの青鷺の絵以外、一切の情報が無いために物語の内容は酷く予想し難い。予測を立てようにも同名の小説しか手がかりが無い。「宣伝をしない」という前代未聞の宣伝を決行した今作に、私を含めて多くの人が「これコケたらどうすんだろ………」と思ったことだろう。
実際に鑑賞してみて、私の思った以上に今作の感想は頭に思い浮かばないものだった。何せ物語は酷く抽象的で、一度観ただけでは分からないものがあまりにも多すぎる。ただ一つ思ったのは………私は今作の世界にずっと居たいと思った。エンドロールを終え劇場を後にする私の心に残ったのは、紛れもない郷愁だった。それ程に今作が持つ世界は澄み渡るように美しく心地良い。それがジブリ特有の優しい絵柄故なのかどうかは分からないが、米津玄師による主題歌を聞いてふと私の瞼から溢れ出した涙は、間違いなく「寂しさ」によるものだと言える。
最早多くは語るまい。とうの昔に息絶えた私の感受性では、ここに仔細な感想を書き記すことすらできなさそう（今作を未見の方には絶対に情報ゼロで鑑賞に臨んでほしいという願いも込めて）なのでこの辺にしておこう。
最後に………駿からの「どう生きるか？」という問いに、私は「自適に生きる」とだけ答えておこう。
