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君たちはどう生きるかのブロコリのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.0
観賞してから一週間くらい経ってしまったからあの時ほどの高揚はもうないけど、とりあえずいえるのは、見て良かった。それも映画館で。

この映画に関しては依然として周りの人たちからはあまり肯定的なリアクションを聞いたことがないけど、ストーリー性や何が伝えたかったのかよくわからないとかそういうことを一旦全て置いといて、「宮崎駿のジブリ」を見れたことに自分は感動しているのかもしれない。

これはたぶん一緒に映画を見に行った友達が映画を見る前に「おそらくこの作品が宮崎駿の最後の作品だよね。それを映画館で見ることに価値があるんだよ。」と自分を諭してくれていたことが大きいんじゃないかと思う。

そんななにか特別なフィルターをかけて映画をみていたせいか、宮崎駿の世界観、表現力にやっぱりこの人は唯一無二だなと感嘆した。

今までの作品のオマージュ的な要素もあったし、ジブリならではの美しさに3D技術が加わって、より迫力のある映像になっていたように思う。

内容に関してはかなり抽象的だし最近の映像に多い説明もほぼしてくれないから、何がなんだかよくわからない部分が多いけど、それが逆に良いなと思った。

何でもかんでも説明してくれて自分で考えなくてももうすべてが完結してしまう話も分かりやすくていいかもしれないけど、このシーンはどんな意味があるのだろうか?何を伝えようとしているのだろうか?と考えなくてはいけない、そしてその答えはその作品を見た人ひとりひとりの受け取り方、考え方、価値観によって変わってくる、そんな芸術作品そのもののような映画だったように思う。ものすごく質の高いアートに触れた時間だったと感じた。

そして他の人の感想も読む中で感じたのは、人生とはまさにアートのようなものなのかもしれない。ひとりひとり違って決まった答えのない、宮崎駿がこの作品で感じさせてくれた感覚こそ、私たちひとりひとりの人生を象徴しているのかもしれない。

正直、今まではアート寄りの作品は難しいしわかりにくくてあんまり好きじゃなかった。でもこの作品を見て、自分の中で新たな扉が開きそうな気がした。

解説を読んでみないことにはわからない部分が多いけど、この映画全体を通して、宮崎駿からこれからの時代を生きていくひとりひとりに「君たちはどう生きるか?」を問われたような気がした。

改めて宮崎駿×久石譲という鬼才達が一緒にタッグを組んできたことって凄いなと思う。生ける伝説である彼らの作品をリアルタイムで見れてよかったと思う。この先、ジブリがもっと評価される時が来るかもしれないと思うと、嬉しくもあり、同時に少し寂しくもある。
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