薩摩フランコ入道

君たちはどう生きるかの薩摩フランコ入道のレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.0
<7月に鑑賞>
これはね、あれですよ。駿はね、『エヴァ新劇場版:破』のミサトさんの言葉が突き刺さったんよ。あの場面で、「行きなさい駿くん!誰かのためじゃない!あなた自信の願いのために!」って聞こえたのよ。

それでずっと心の奥にしまい忘れた大切な箱に閉じ込めていた「おかんにもっと甘えたかったぞ」という感情をフルスロットルで開放して、本編冒頭の眞人の如く、「お母さーん!!」と世界の中心で愛を叫んじまった駿自身のための個人映画ですな。製作委員会じゃ付き合いきれん、これは。だからジブリの自己資本。

それでも爽快だった。大叔父や石(宮沢賢治=イバラード)、サギ男(手塚治虫=猿田彦)のような美しかったり、寓話的だったりする「みんなのための物語」書くのやめたいんで、極めて醜き個人主義に突き進ませてください!と宣戦布告した駿の魂の慟哭。でも衆愚による軍国主義の暴走をインコ帝国というメタファーで描き切ってるし、叔母への歪な愛憎は『失われたものたちの本』における当時の自己投影の直視なので、手塚的なものの呪縛からは完全には逃れられていない感じがする。

一番ショックだったのは、企画段階で真剣に『トトロ2』が挙がっていたことだけど

@新宿ピカデリー