よどるふ

マダム・ウェブのよどるふのレビュー・感想・評価

マダム・ウェブ(2024年製作の映画)
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日本版ポスターでは〈マーベル初の本格ミステリー・サスペンス〉と謳われている本作だが、このプロットはミステリではない。むしろいくらでもミステリになりそうな道具立てを備えつつも、それらを非ミステリとして構成した作品と言える。主人公には突如として未来のビジョンが見える能力を持っており、それをミステリの謎として扱うこともできるだろうが、ビジョンの輪郭が不明瞭なため、観客の興味を引くほどの魅力があるとは言い難い。なので自分は、本作をミステリではなく「非戦闘的な能力を持つ者が、理不尽な暴力を振るう者に抗う話」として観た。

天井のデザイン、放射線状に割れたガラス、レースのカーテン、窓の枠組みなど、全編を通して画面上に“蜘蛛の巣”に似た図像を映すことに並々ならぬ力が注がれていた作品でもあった。敵陣営が主人公陣営を追い詰めるための手段が、それを言い表す言葉の由来ともなっている“WEB”であるところも気が利いている。そういう作品に散りばめられた蜘蛛のモチーフ使いは良かったが、画面の作り方としては人物の顔に妙な感じでズームインするカットに落ち着きのなさが感じられたり、敵陣営の動き方に本気さが感じられなかったりと、気になる部分は多かった。でも、“とある人物”の名前を伏せたままにするところは良かったかな。
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