すし酢高跳び

死体の人のすし酢高跳びのレビュー・感想・評価

死体の人(2022年製作の映画)
3.5
1人勝手に奥野瑛太祭り開催中。
先日観た『碁盤斬り』の左門役が、あまりにも素晴らしかったので、まだ観ぬ作品と言う事で割と新しいこちら。

売れない役者、広志(奥野瑛太)に来る役はいつも殺されたり、死体の役。けれどそこにもこだわりを持ってやっている。正に職人、と言えば聞こえがいいけど、なんせ芝居がクサイ。舞台をやっていたからか、常にオーバーでやり過ぎ。

しかし、家では死を極めようと、カフカ・ダヴィンチ・太宰治の死についての言葉を読んだり、風呂で水死体になり切ったり。警備員の仕事ではなるべく青白くいたいので、日焼け対策に余念がない。それでも、現場ではダメ出しされる。

「死のうとしちゃダメ」

これまた先日観た『ミッシング』の石原さとみを思い出す。確かに彼女は頑張ってた。けれど、頑張ってるのが、こちら側に伝わってる時点でどうなんだろう。そこを超えて役になる、というか現実に存在するその人になっているからこそ、自然で私たちも感情移入できるのではないだろうか。

そこ行くと『碁盤斬り』のつよぽん。普段の彼からは遠くかけ離れているのに、その役、その人そのものにしか感じられない。
この時の広志は、まだ石原さとみだった(やめろ)

悶々とする広志は、気晴らしにデリヘルを呼びます。

そして加奈(唐田エリカ)が現れ、玄関で即尺のオプション。本番はございません。ちなみにそこまでエロいシーンはありません(残念でしたね)

この加奈には、クズ代表バンドマンのヒモ彼氏がおります。
彼女が帰った後に見つけた、忘れ物。それは妊娠検査薬。これを何故だかやってみる、男広志。

死体役者の鬱屈していた生活が、少しずつ動き出した時、実家から連絡が。お母さん(烏丸せつこ)が検査入院するという。

何となく嫌な予感と、まだ親孝行もしてねーなぁと振り返る広志。が、時既に遅し。お母さんの体は、もうあまり残された時間がない様子。その時初めて、本物の死を目の当たりにした広志。

またデリヘル嬢、加奈にも変化が。
奴隷のような日々への別れ。あの修羅場は最高に良いアイデアと笑い、だけどなんだかほっこり良いシーンでした。

死を考える時、それは生を考える事だと思う。

お客さんと風俗嬢という出会い方ではあるが、お互いになんだかシンパシーを感じたのは、あの妊娠検査薬を見つけた事だろう。

死体役で、死ばかりを意識して来た広志が、目の当たりにする生。

この辺りの対比、母との別れも含め、再生物語として凄く良かったです。特にお母さん役の烏丸せつこさんの最期のシーンは名シーンです。

唐田エリカは頑張ってました。でも、自然で良い感じです。特に修羅場は最高です!
また、割とギョロ目の和製ジェイクギレンホールのような、奥野瑛太さん。その見た目のインパクトが、今作では最高に生かされていて、ラスト部屋で1人芝居をするシーンは圧巻で、めちゃくちゃ良かった!やっぱり実力あるなぁ。

悪役イメージから、これからは違う役をまだまだやってくれそうで楽しみです!

94分とサクッと観れて、わかりやすい良作です。
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