イワシ

The Price We Pay(原題)のイワシのレビュー・感想・評価

The Price We Pay(原題)(2022年製作の映画)
3.5
フーパー『悪魔のいけにえ』を容易に彷彿とさせるが、レザーフェイスにあたるエリカ・アーヴィンの顔面は見事に剥げ落ち、チェーンソーの代わりに大鎌を振るう(『悪魔の沼』!)。その顛末も皮被りが踊り狂うのとは対照的にこの巨体の女は身体を拘束され、悲惨な最期を遂げる。

エリカ・アーヴィンとジジ・スンバドの追走撃は忙しないカット割だが負傷と麻酔の影響なのか鈍重な印象を与えるが、むしろこの鈍重さが生々しい痛々しさとして見ている側に迫ってくる。俯瞰の空撮で捉えられる両者の近さと遅さが、今にも倒れそうな逃走者としぶとく迫る追跡者の対比として際立つ。

ジジ・スンバドともう一人の生還者がトラックで農場を後にするとき、二人の間で交わされる会話は『わらの犬』を連想させるが、ダスティン・ホフマンとは異なり(あるいは『悪魔のいけにえ』のマリリン・バーンズとも)、スンバドの表情はどこか明るく開放感がある。おそらくそれは、ジジ・スンバドがハンドルを握り、自らトラックを運転して惨劇の場所から去っていくからだろう。
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