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赦しのout1のレビュー・感想・評価

赦し(2022年製作の映画)
1.0
加害者の少女、被害者の両親の台詞の澱みのなさにしらけてしまった。

そもそも「殺人」という重荷を背負った人間をレクター博士のようにあんなに饒舌に喋らせたらダメでしょ。「殺人」に躊躇のないサイコパスの態度で、全く別の映画になってしまう。

そもそもイジメという事実が裏に隠されながら裁判が進んだという設定にも無理があるし、
娘が行ったイジメと娘の死を同時抱えてしまうのが遺族の人生(どう受けるかの設定はたくさんあるとは思うが…)なはずなのに、それは放棄され、
最後の最後で少女の告白によって明かされても
「娘が行ったイジメ」に対する受け止めかたは、「受け止めない」という人非人という演出ですらもなく、
ただただ薄っぺらい。
後半は夫婦の関係性のドラマに移行するくらいだし。

すべての人物描写が監督の観念で動かされているようで、見続けるのが辛い。
イジメも殺人も娘が殺されることも、夫婦のドラマを盛り上げるための要素でしかない。
イジメとイジメによる殺人の、罪の大きさ比べをしているよう。

つまり全く当事者の当事者性が描けていないと思ったのですが、
さらに被害者の両親が頻繁に使う「あなたにはわからない」という他者を拒絶する言葉の通り、
MEGUMIは藤森慎吾ではなく、元旦那役の尚玄の歩く道を辿ることで、
当事者同士が寄り添うことを示唆するような終わり方をする。

この作品は当事者の物語を内側からも外側からも何一つ描けていないと思うのだ。

また、このフィクションの根底にあるイジメを監督は、事故のような不幸の一つとしてしか認識出来ていない。
イジメが及ぼすその後の消えない傷跡を全く理解出来ていない。
というかこの監督は、過去を背負う人間の各々の痛みを感受できない人間なんだと思う。

役者はみんな悪くない。
ただ監督の観念を喋らされている抜け殻の人物を見るのは辛過ぎた。
監督の自慰行為を終始見せられているそんな作品だ。

悪口はまだ続く。
加えて映像のルックもソフトフィルターを使って映画っぽくしているけど、シーンの重たさと合っていなかったり、
無駄に多い切り返しも感情を断ち切るし、
そもそもショットがことごとく良くないし…。

この作品を好きな人とは絶対友達になれないと思う。
今年ワーストの作品でした。く
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