Hachi

赦しのHachiのレビュー・感想・評価

赦し(2022年製作の映画)
4.1
赦しとは、償いとは。
立場によってその意味は違い、全ての当事者が迷い、揺れて、苦悩し、衝突する姿が苦しい。

それとは対照的に、いかにも仕事的に事務的に事を進めようとする弁護士・裁判官が少し滑稽なくらいの描かれ方をしていて面白い。
弁護士たちの振る舞いはいかにも。彼らの行動の根幹にあるのは正義ではもちろんなく、かといって欲深さとも異なる。仕事として金を取れそうなところからは取るべきだからやってるだけ。特に印象的だったのは真矢みきさん演じる裁判官。被告である松浦りょうさんが決死の告白をして会場がどよめく中、笑みさえ読み取れるような非常に事務的で微妙〜〜〜な表情がたまらない。そのスタンスは裁判の結果からも読み取れる。

松浦りょうさんの演技も素晴らしかった。大袈裟に苦悩するでもなく、諦観したような、弁護士たちの事務的な雰囲気に巻き込まれるような淡々とした喋り。でも時折り投げかけられる視線、彼女の口から発せられる本質を突いた言葉にドキッとさせられる。本当にそれが正義か、お前はどうなんだと問われているよう。

MEGUMIさん、藤森さん、尚玄さんの三角関係の表現も絶妙。
藤森さん、珍しく硬派な役柄では?と思いきや、なんというか、そこはかとなく滲み出てしまう軽さ?が絶妙で、なるほどのキャスティングだった。俳優としてのキャリアを積むごとに好きになってく。

映像のトーンやスタイリング、グラフィックデザインも美しくて好み。
(MEGUMIさんの着てたトレンチ素敵だったけどどこのかしら。)

あとワインを飲む描写が逃避の象徴として描かれていて印象的だった。ビールでも焼酎でもなくワインを選んだ意味はなんだろう。真意はわからないけど、そんな部分にもセンスを感じた。
Hachi

Hachi