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アイドルマスター ミリオンライブ! 第3幕の雑記猫のレビュー・感想・評価

3.0
 アイドル育成ゲーム『アイドルマスター』シリーズの1ブランド『ミリオンライブ!』のアニメ化作品。8月公開の第1幕、9月公開の第2幕に引き続き、本作は今月から放送されるTVアニメの9話から最終話までを1本の劇場作品に編集したものとなっている。


 本作の異色な点は最終話まで通して縦軸の物語が非常に希薄な点。もちろん全くないわけではなく、メインキャラクターである春日未来のアイドルになる夢であるとか、天才肌の伊吹翼が努力する必要性を学ぶであるといった、各キャラクターのシリーズを通した成長は描かれているのだが、これまでのアイドルマスターアニメ作品で描かれてきたような大きな挫折や紆余曲折は描かれていない。強いて言うならば、最上静香の親との確執がそれに当たるものの、これもかなりの薄口となっている。これには12話で40人弱のキャラクターを動かす都合上、あまり大きな縦軸の物語を作りにくいであるとか、あまり重い話をやってもメインの客層からの受けが悪いであるとか、色々と都合があるのであろうが、結果としては「アイドルたちが一生懸命頑張って、大きなライブを成功させる」という非常に平坦な物語に帰着している。


 ただその一方で、そういった物語の起伏を廃した代わりに本作ではこれまでのアイドルマスターアニメ作品とは比較にならないほどにライブ描写に力を入れている。アイドルマスターのアニメ作品では最終話で大型ライブを行うのが恒例となっているが、本作では最終話1話前の11話の後半から最終話1話まるまる使って、著しい長尺でライブシーンが描かれる。そのため、投入される楽曲数もシリーズぶっちぎりの最多でかつ、どの楽曲でもしっかりアイドルたちのダンスが描かれ、さながらライブビューイングのような構成になっている。アイドルマスターシリーズでは、実際にキャラクターたちを演じる声優によるライブがメディアミックスとして行われているが、本作ではそのライブの熱気や興奮を再現することに注力しており、この試みはしっかりと成功していると言えるだろう。
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