こーたろ

世界の終わりからのこーたろのネタバレレビュー・内容・結末

世界の終わりから(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます


両親がいれば違った運命もあったろうに、とユキに対して言うシーンですかさずハナを映すカットとか、サエキさんがいじめっ子に銃を向けるシーンの眼球の見開きを斜めから撮るカットとか凄い好き。
キャシャーンから問うている争いや憎しみあう絶望や希望を訴える、どの世代にも見て欲しい作品。
てゆうか全人類に見て欲しい。

役者の演技も凄く良い。
夏木マリさんは完全に湯ばー○だけどw、物語をナビゲートする喋りのトーンが心地よいし、
官房長官は我欲の象徴でいいし、
無限は絶望、ユキは復讐、ハナはジレンマ、みんな本当に引き込まれる。


また、SF的な余白があってそれも面白い。

ので、以下に考察しようと思う。


◇輪廻師と運命の書
まず、あの運命を示す本を勝手に運命の書と呼ぶ事にする。
結論から言えば、未来からもたらされた本であり、
現代において記載情報が書き換わるのは、
ハナが過去に干渉して歴史が変化するからで、
BTTFでドクがもつ新聞と同じである。
ソラの時代より先の未来または別の未来の世界きら過去に送られたもので、目的は未来人による絶望的な歴史の改変であろう。
輪廻師は、未来人の生き残りの末裔達で、
より平和な世界を作るために物理現象や世の中の理を変える力にアクセスできる限られた者達。
夏木マリも同じ。
では夏木マリがやればいいのでは?と思うが、恐らく力を行使できる人は期間的な制約や付与された能力に差があるのだろう。
みんなが使えてしまうと妨害できてしまうからだ。
また、私欲のために使うと死ぬ代償があるのも制約だろう。
危険な力でもあるため、祠の物体に近づかないと完全には使えない能力である。
よっていくつもの制約を超えなければ世界を書き換える事はできない。

→輪廻師の能力
・運命の書が読める
・過去や未来に意識を飛ばせる(改変できる)
・時代別の輪廻師同士の意識を共有できる
・物理現象を超越できる

◇孤独な人々と能力の発動
紀里谷監督いわく、
裏設定でエザキとサエキは孤児院育ち、スパイ的な活動を行っていたとのこと。
この作品の主要人物はみんな孤独だ。
しかし、それらは繋がり一つの結果を出す。
思うに、輪廻師の能力の始まりは孤独になった時に起こるのではないか?
ユキは親が殺された、ハナはおばあちゃんが死んだ、ソラはもう1人は嫌と言ってたので条件を満たしている。
本作の話もおばあちゃんが死んでから始まる。
恐らく、1人になったと認識した時点で孤独を解消できるように過去に干渉できるようになるのかも。

◇ソラと荒廃した人類の未来
未来ではソラが人工知能ロボと移動している。
想像だが、地球が滅んだ時に人類は微妙に残っていた。また、地球外に移り住んでいた。コロニー的なものがあり、自給自足出来ていたがソラを残して他の人間はたぶん死んだ。
長らく孤独のままだったのであろう。
その時、輪廻師の能力が発言し、ハナの意識と繋がり、タイムカプセルの場所を探すきっかけとなった。

◇さらに未来から
インターステラーな感じで申し訳ないが、
輪廻師も運命の書も、それこそソラの世界では、前述のテクノロジーを作り出す環境がないので、さらに未来か別世界から過去にもたらされたのではないかと思う。
ニワトリの卵ではなく、
最初の時間軸で人類は滅びた、その生き残りが過去にテクノロジーを送ったと思う。


◇無限と白い髪の男の子の正体
白い髪は神様。
無限はその反対の悪魔的なもの、あるいは世界を変えるために未来からやってきた不老不死の未来人。
無限は平和な世の中を作るための輪廻師とその能力の観測者だったが、人に絶望し、その役目も放棄し、無限となった。
神は干渉しないが、
無限は無差別に人を絶望に落とす。
ただ、ハナの夢で会った神は、ハナがその世界の人間ではないと認識したタイミングで夢の世界に固定しようとした。
夏木マリが気付かれた!と言ったのはたぶんそのため、解放したのは気まぐれ。
無限は1番人間の業を理解していて、世界を絶望視している。身内が死んだからなんだというのだ、というのも死ねない自分からすれば羨ましいのと、遅かれ早かれ死ぬからだ。無限からすればその時間は対した差ではないからだ。
だから終わりを望んでいる。
人に絶望してなければ神同様に生きたかもしれない。
ハナを殺さないのは、世界を滅ぼせる力を持つ可能性があるからだ。即ち自分に死をもたらしてくれるからだ。

◇手紙の正体
終盤にハナが行った事と同じ、誰か託した1枚の運命の書である。目的は手紙を届ける事、ではなく実は祠に到着し物体に接触して力を得る事であった。
ただ、ハナと違ってアナログテープという伝える媒体がないために、意図が間違って伝わった可能性がある。
よって無垢な子供の残虐な報復が始まるのである。
ハナはテープを送るという手段で親の愛や思いを伝える事を理解していたので未来の輪廻師にはその願いが伝わった。

◇過去未来同一時間軸説
祠、タイムカプセルなど、時代をまたいで共通する物体があるので同じ世界の同一時間軸である可能性は大いにある。が、未来の輪廻師は違う世界があると解釈していた。


◇マルチバース説
ハナが過去に夢を通して干渉出来るという事は、その行動によって歴史が分岐し、いま流行りのマルチバースを生み出すことになる。
よって輪廻師は複数の時間軸を生むので、
未来の輪廻師ソラは違う世界と呼んだのだろう。
それでも荒廃した未来に到達する結果は同じだったのだろう。
人類が1パー未満の世界では分岐のしようがないので過去に託すしかない。
終盤、ユキの世界ではグレーのフィルターが薄くなっており、世界の境界が曖昧になっている。
ハナが弓矢を受けて傷ついたり、チョコの紙を持っている事から、夢の世界もまた現代世界に影響する。

◇結論
ハナは最後、輪廻師完全体なので世界の終わりを許容している。無限が言ったように人が救われたいと望んでないのも正解だと思っているからだ。

隕石で世界を滅ぼしたのは現代に干渉できるユキの可能性藻あるが、
たぶんハナが無意識に行っていると思う。
夏木マリがユキが滅ぼすと言ってたが、
日本にあこがれをもつユキが滅ぼす理由は薄い。
無限との会話や気遣ってくれた人達の死、ユキの孤独を救えなかった自分と世界に絶望しているからだ。
その反面、
希望を未来に託す気持ちもあるのでタイムカプセルを使った。
救えなかった過去の輪廻師を救う事で、ユキの報復は消え、ハナの心臓や親の死も改変されている。
輪廻師による滅びは回避されたが、人間の本質は変わらない。しかし世界を愛したい。あなたはどうする?というメッセージだと思った。


◇精神世界説
夢は自身の内面世界の話で過去や未来ではない。ユキはハナの無垢な部分の自己投影でソラはハナの理知な部分の自己投影、それを客観的に観察しているに過ぎない。ウテナ的なもので、子どもから大人に変わる際の自己改革である。
それを壮大なSFで解釈したものなので、家族や滅びはない。
しかし、人の業や絶望、社会は同じだ。
そしてそれは映画のなかの話ではなく現実なのだ。
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