もはや死語なのかもしれないけど「セカイ系」を超高品質で実写化したらこんな感じになるという正解。映像はとってもゴージャスだし、バージンバビロンレコードっぽい劇伴がさらに気分を盛り上げる。流石に10代くらいの感受性は失くしてしまった私向きではないというだけ。
CASSHERNとかGOEMONはだいぶ昔に途中で挫折しちゃったけど、やりたいことや少し大袈裟過ぎるくらいの映像美には一貫した作家性を感じる。紀里谷監督、唯一無二なものが確実にあるので今作でラストはもったいない。というかすごく需要のある才能な気がする。
キャストも結構よく、今作とは正反対のリアリティある小規模作品で確実に存在感を示していた伊東蒼さんや毎熊克哉さんの起用が素晴らしい。岩井俊二さんも意外と上手く、監督自ら「エーテル」について語ってくれるなんてサービス精神旺盛。夏木マリさんは今にもUber eatsでいいんじゃない？と言い出しそうで困っちゃいましたが。
でも一番良かったのは高橋克典さん。ドラマ『モンテクリスト伯』以来の権力者系クズ！めっちゃ似合ってて最高でした。ただあれですね。明らかな悪役に、同業者のしかも特定してしまいそうな珍しい苗字をつけるのはやめましょう。
ーーーーーーーーー
・高橋官房長官が「占いなんかに頼るなんて馬鹿げてる！」というところで、思わずそっちに感情移入してしまった。持たざるものが必死になんとかしようとしてる姿に見えてしまったのと、現実に占い師とずぶずぶの政治家が存在しているという都市伝説を想起して。
・正直、いけてなかったのがメディア&ネットリンチ描写。「やべえ！インスタ映えじゃねえ？」は多分おじさんしか言わない台詞だし、ただの野次馬なんだから流石にいきなり毎熊さんをぶん殴ったりはしないでしょ。これ系の描写って現代〜近未来舞台だと体感で3本に1本くらいで見かける手垢がつきまくった厭世表現なので、やるんならめちゃケアしなきゃセンスが露呈しちゃう劇薬になる。SNS嫌いなのはわかるんですけどね。
