まや

あのこを忘れてのまやのネタバレレビュー・内容・結末

あのこを忘れて(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

短い時間の中で重たいテーマを扱っていて綺麗にまとまっているのはすごいと思った。また、副作用で特定の人を忘れるという設定は面白かったけど正直なところあまり乗り切れなかった。

「忘れる」ということをテーマに2組の男女(夫婦とカップル)を軸に物語が進んでいく。

忘れたいほど辛い記憶、それを都合よく忘れられたら、辛い渦中にいる時はそんなことを強く思うけどいざ忘れてしまったら、それはとても悲しいことなのだろう。その辛い記憶もきっとかけがえのない自分の一部になるから忘れてしまったら、自分の一部が無くなってしまうことに近しい気がする。でもきっと人間はずっと覚えておくことはできないのだろう、そんな儚い記憶だからこそ覚えておきたいと思っているのだが、本作は結局忘れることを肯定的に捉えてるのか否定的に捉えてるのか曖昧な感じがしてそこが気になった。(そこがテーマではないのだろうが、タイトルからそこを中心に見てしまった)

ご夫婦の方は子供を失っていて、もし私がそれを忘れていることを言われたらきっと覚えていなくても、覚えていないことに対して自分が嫌になって気持ちが壊れてしまう気がしたので覚えてないとあっさり言って相手に覚えておいて欲しいというのも少し疑問に感じた。
薬を飲む前のシーンでは夫婦そのものが壊れかけてしまっているような描写があるが、この忘れたことで夫婦が再生されている感じがして、だから忘れることを肯定的に捉えているのかなと思ってしまって、自分の考えとは違うから乗り切れなかった。

カップルの方も、本当は記憶があって忘れたフリをしていた男性とそれをいいことに前から片想いしていた女性が自分は彼女だと嘘をつく。そこで擬似カップルが生まれるが、記憶があるならどこでこの嘘をついている女性が好きになったのかわからなかった(そもそも元々の2人の関係も何繋がりなのかよくわからなかったから補完できなかった)ので感情が置いてけぼりだった。あと普通にこういう嘘はちょっと一方的で嫌悪感があった。(自分がされたらだいぶ嫌だ。嘘を利用して自分の気持ちも相手の気持ちにも向き合えてなくて、ただ自分の欲望をぶつけているだけな感じがした。)

しかも、本当の元彼女(男性側の忘れられない人)もこの元彼の記憶がない。なんとなく強く思っている人のことを忘れるという設定(夫婦の話から)なのかと思ったのできっと元彼女側は元彼氏のことがかなり好きで忘れられなかったのかなと思った。

でも結局忘れたまま新しい彼氏と幸せそうになるのも忘れることを肯定している感じがして(最後振り返っているから覚えているのかもしれないけど、そこの正誤は判断が難しい)忘れられない辛い記憶を癒す映画と勝手に期待して見てしまったのでそうではないのだなと思った。

あと、プリンも多用されすぎていて全ての感情の時に食べているからどの感情か分かりにくくあまり上手く機能していないように感じた。

ただ、とても丁寧で優しい光の中、包み込んでくれるような雰囲気で物語が展開されて行くのはよかった。

忘れる映画といえば私の中ではエターナルサンシャインがあるのだが、あの作品は男女が忘れることを決めるのにそこから2人で忘れることに抵抗する物語で大好きなので勝手に期待してしまった自分が良くなかったかなと思った。
まや

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