Omizu

サバイバルのOmizuのレビュー・感想・評価

サバイバル(2022年製作の映画)
3.7
【第73回ベルリン映画祭 コンペティション部門出品】
『クワイエット・ルーム』などのロルフ・デ・ヒーア監督作品。ベルリン映画祭コンペに選出されたオーストラリア映画。

なんでこれ邦題がついてるんだ…?

まぁそれはさておき、いざ観てみるとほぼセリフのない作品だったので驚いた。話す場面でも架空の言葉なので字幕がなくニュアンスで分かる。そういう意味では観やすいものの、話自体は観やすいとは言えない。

乾燥した大地に檻ごと放置された女性が主人公。彼女がサバイブしていく様子を描いているのだが、エンタメ要素はなくかなり淡々としている。

どうやら感染症が広まったディストピア的世界のようだが、何一つ説明はない。ロード・ムービーのようにただ彼女の行く末を見守っていくだけ。出てくる人々はときに彼女と敵対し、ときに仲間になる。

一進一退のような展開が不思議な作品だった。最終的に何が言いたいのか、それは完全に観客に委ねられている。ディストピア的世界に残った人間の乾いた感情を描いている、と言えるのかも。

個人的にはなかなか面白かった。世界観もいいし、そこで展開される淡々とした語り口も嫌いじゃない。何を読み取るかは受取手の自由な分、こちらが試されているようだ。

配給がつかないのはそりゃそうだろうなという感じだが、ロルフ・デ・ヒーア監督作品初見の自分としては面白い作家性だと思った。
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