あなたのやさしさを何に例えよう

夜明けのすべてのあなたのやさしさを何に例えようのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
5.0
映画は開始間もなく、”5年後”の藤沢さんを映す。藤沢さんは、栗田科学という小さな会社で周囲の理解に助けられながら働いていた。この5年間のことは描かれていないけど、たくさん努力をして自分の居場所を作ってきたんだろうなということが伝わってくる。休憩時間に買ってきたお菓子を同僚に配る気遣いも、PMSとともに生きるためにに身につけた彼女なりの処世術だろう。
映画の始まりの時点ですでにちゃんと強い藤沢さんが、そこからさらにいろいろな人と関わっていく物語が、これから始まる『夜明けのすべて』なんだなあと感じた。

PMSのことを聞いて本を借りた山添くん
他者を知ろうとした瞬間

弟が残したカセット
仕事が好きだったのか、でもあんな死に方しちゃったし・・・
どっちが本当だったのかわからない

500年前の光、コロンブスの頃の光が、今の夜空に見える。

孤独な星
ちょっと寂しくなさそう

PMSでよかったこと
ヨガとかで体が柔らかくなったとか?

早退した藤沢さんの家に、山添くんが忘れ物を届けに行った帰り道。自転車を漕ぎながら、木々が揺れる音に胸を打たれる山添くんの姿が印象に残った。こんな瞬間ってあるよな。思いがけない世界の平凡さに救われるようなことって。
(鶴瀬で夕日を見たあのときと同じように)

PMSであることを便利に使う
PMSだからってなんでも言っていいと思ってる?
←すごくよかった

「みんなそうなんだろうけど」
と何度も言う藤沢さんがいた。すごく真面目で。でもだからこそしんどいんだろう。

会社のみんなで、暗くしてプラネタリウムを鑑賞する画がよかった

「夜明け前がいちばん暗い。
これはイギリスのことわざだが、人間は古来から夜明けに希望を感じる生き物のようだ。
たしかに、朝が存在しなければ、あらゆる生命は誕生しなかっただろう。
しかし、夜が存在しなければ、地球の外の世界に気づくこともできなかっただろう。
夜がやってくるから、私たちは、闇の向こうの途轍もない広がりを想像することができる。
私はしばしば、このままずっと夜が続いてほしい、永遠に夜空を眺めていたいと思う。
暗闇と静寂が私をこの世界に繋ぎとめている。
どこか別の街で暮らす誰かは、眠れぬ夜を過ごし、朝が来るのを待ちわびているかも知れない。
しかし、そんな人間たちの感情とは無関係に、この世界は動いている。
地球が時速1700キロメートルで自転している限り、夜も朝も、等しくめぐって来る。
そして、地球が時速11万キロメートルで公転している限り、同じ夜や同じ朝は存在し得ない。
いま、ここにしかない闇と光ーーすべては移り変わっていく。
一つの科学的な真実ーー喜びに満ちた日も、悲しみに沈んだ日も、
地球が動きつづける限り、必ず終わる。
そして、新しい夜明けがやってくる。」

みんな遠ざかっていった。
でも本当にそうだろうか?
←すごく良い。自分が勝手に遠ざけただけ。大切なのは人を信じること。

エンドロールのキャッチボール好き

栗田科学の「人間の距離」

BGM含めて宇宙でまどろむような感覚
優しくて温かい膜に包み込まれるよう

子供を喜ばせること・人と向き合うことを考えれば良い仕事だからこそ実現できるあり方なのかなとも思う。
うちの会社では無理だもんな。
会社はわざわざ評価の物差しを作るから、そこに摩擦が生まれる。でも生活のために働く以上、組織に属する以上、評価のシステムは必要なわけで。
人間とは・・・。

つまらない映画やドラマだったら、
藤沢さんと、山添くんの彼女の千尋さんの対立構造を作ったり、
藤沢さんと山添くんが男女を意識するシーンを作ったり、
そうしないのがとても信用できる。
結構予想を裏切ってくる映画かもしれない。
山添くんの発作は1回しか起こらない。地震でも停電でも発作は起きないし、藤沢さんにスマホを届けに行くときに線路沿いを通った時も発作は起こらない。
いつか起こるものだと思ってヒヤヒヤしながら観てたけど。そういうふうに、発作を物語物語の加速装置にしない誠実さ。

24.02.19
ユナイテッド・シネマ浦和