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ミンナのウタのKOZROのレビュー・感想・評価

ミンナのウタ(2023年製作の映画)
4.7

◼︎本人役のジェネレーションズ
自分はジェネレーションズのメンバーをほとんど知らず、顔と名前を覚えるところからスタートだった。
しかし各キャラの特徴づけが立っていたし、演技も違和感なく受け入れられた。

メンバーで唯一霊感のあると描写される中務さんの頼もしさ。
マネージャーから「変わっている」と言われる彼は単なる不思議ちゃんではなく、この世のものではない”サナ”の存在にいち早く気づく。
しかしメンバーを遠ざけようとするわけでもなく、テープも普通に聞いてしまうのは「多少霊の影響を受けやすいだけ」という、絶妙なラインに感じて、突飛な展開にならない感じが良かった。

また、関口メンディーさんは唯一自分が知っているメンバーだった。
探偵の権田(マキタスポーツ)も、ついリーダーの白濱さんのことを「えぇっと…関口…」と、印象に残っている別の名前で言ってしまい、マネージャーに怒られる。なんかリアルで笑った。
そんなガタイの立つ関口さんだが、すごく強そうなのに、今作で最も繊細なキャラクターとして描かれるのも良い。

◼︎平成感
平成という時代の「あるある」感も良い。うちのクラスにも、ああいう一つ一つの文字に拘って文字を書いている女子がいたのを思い出した。あの手紙の折り方も、懐かしい。

◼︎サナの先生
今作で一番好きなキャラ。
サナと先生の奇妙な絆を感じるシーンは、とても好きだった。
自販機の下のノートを読んだ先生は、サナのサイコっぷりに引きつつも「将来はアーティストかな?」と、理解を示そうとする。そのシーンが少し涙腺に来た。

ラストシーンで、マネージャーの凛が急にサナの価値観に理解を示し出し、
身を挺して首吊りから救おうとするシーンがあったが、
やはりサナに愛を教えるのは先生の役目であってほしかったなーとも思う。

◼︎呪怨っぽさ
清水崇の代表作「呪怨」を思い出すシーンがいくつかあった。
まず「家」というモチーフ。入っていきなりある階段が、何故か恐ろしい。
「上の階に何があるのかわからない」のが、生理的にゾワゾワさせるのだろう。呪怨のラストシーンを無意識に刷り込まれているかも。
「トシオ」という名前の弟と「猫」というモチーフもあえてか。

◼︎テープのように「再生」される記憶
最初に中務さんが高谷家に行くシーンで、さなの母が全く同じ行動を繰り返すとこ、めちゃくちゃ恐ろしかった。自分とミンナの魂を封じたカセットテープを再生するように、この世に残された強い情念は、今もどこかで人しれず”再生”され続けているのかな。

◼︎サナの声
少し残念だった場面の一つとして、サナちゃんの声が可愛すぎた。恐ろしい幽霊のはずの声がやけに艶があり、生暖かい恐ろしさが少し抑えられてしまった。

◼︎丸く治ってしまった
終盤はもっと後味悪くして欲しかった。メインキャラがアイドル(本人役)なだけに、死人を出せないんだろう。
居心地の悪さ、生臭さがゾクゾクしたのに、割と収まりのいいラスト。
エンドロール後にあった、ライブ会場にて「まだいるよ〜」的に終わる感じも、なんかありきたりだな…と

全体的に流れる不吉な雰囲気は最高だったし、
特にサナの母の「私の赤ちゃんどこやったのよぉぉおおおお」のシーンは
マジで恐ろしく、爽快感さえあった。

また見たい。
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