たく

セフレの品格(プライド) 初恋のたくのレビュー・感想・評価

3.9
初恋の男性とセフレの関係になったシングルマザーの葛藤と前進を描いてて、「お互い好きになったら関係が終わる」というシチュエーションは最近の学園青春モノに多いけど、本作はリアルな心の機微が絶妙に盛り込まれててジーンと来た。ピンク映画出身の城定秀夫監督が「扉を閉めた女教師」で見せたアダルト路線が活き活きと輝く。「タイトル、拒絶」で地味ながら色気が際立ってた行平あい佳が期待通りのハマり役で、母親としての色気のない日常との演じ分けが見事。彼女以外にこの役をできる役者が思い当たらないくらい良かった。

2度の離婚を経験してるシングルマザーの抄子が、ある日出席した高校の同窓会で再会した初恋相手の一樹と成り行きで一夜を共にする。ここから一樹からのセフレの申し出に戸惑う抄子が常識と肉欲の狭間で葛藤していき、会社の同僚の栗山と愛のないセックスをすることで吹っ切れる展開。この栗山が祥子の世間の常識に対する意識を相対化させる重要な役回りで、漫画チックなコメディ演出で滑稽さが強調されてたけど、冷静に考えると笑えない存在。

一樹が一見どうしようもない女好きのように見えて、不思議と嫌な感じがしないんだよね。むしろ祥子に対してある種の誠実さが感じられて、現在の彼を形成した忌まわしい過去が後半で回想されることで納得する。彼が抄子に対してセフレとして恋愛感情を持たないためのルールを課して、抄子がそれを優しく受け入れる感じが何とも良い。抄子の終盤のセリフがまた良くて、この二人の関係性にちょっと「別れる決心」を連想した。

これ一作で終わっても充分満足な内容だったけど、エンドクレジット後の後編の予告で何だか不穏な展開を予想させて、これから8月4日の公開日まで「指折り数えて待つ」日々を過ごしそう。
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