Kachi

碁盤斬りのKachiのレビュー・感想・評価

碁盤斬り(2024年製作の映画)
3.7
勧善懲悪モノが観たいなら本作はその王道

草彅剛と清原果耶が親子役ということに惹かれて鑑賞。草彅の朴訥とした、内に秘めた正義感で動く武士の端くれ役は妙にハマっていたように思う。そして、そんな不器用な父を健気に支えるお絹役の清原果耶もまたハマり役だった。

一方で、話の筋は思ったよりも単調なようにも感じた。

本作はいわゆる人情モノであり、最終的には悪が成敗される、勧善懲悪系の話である。草彅剛演じる柳田は、途中で自身の清廉潔白な振る舞いがかえって周囲を不幸にしているのでは、と想いを馳せる描写はあるものの、基本的には自分の生き方を貫く。その生き様を周囲も受け入れて、円満な着地へと進む。

個人的には、もっと柳田には武士としての生き方と世渡りの狭間で葛藤していて欲しかった。もっとも、等身大の当時の武士にとっては武士としての矜持を持ち続けることは重要な価値観であるため、ある意味ではリアルなのではあるが…

(もっとも、ラストで狩野探幽の絵を譲り受けるシーンはせめてもの抵抗のようにも感じられ、主君に忠義を誓う清廉潔白なだけではなくなったと言えばそれまでだが。)

その他、2点ほど気がついた点。

1. 盤面のシーン
冒頭に吉原で詰碁を教えるシーン。あれが、因縁の柴田との対局シーンに繋がるところにちゃんと伏線回収があった。実践ではまず出ない特殊な石の形(うって返しの応用編みたいな並び)が、実際に出てきて凄腕の碁打ちである柴田を破るというのは、碁をある程度知っていれば奇跡と実感できるだろう。

ただ、説明が少ないこともあり、どれだけの人がこの二つのシーンのつながりを理解できるだろうか…?それ以外の盤面のシーンも、私はどういう局面かは分かったが、そうでない人にとっては意味不明となるため、少し玄人向けなのかもしれない。

2. 画面の暗さ
全体的に画面が暗く、あまり様子が分からないシーンが多かった。当時はもっと灯りが少なくて、世界は暗かったのだと思うが、当時の雰囲気に寄せるあまり、役者の演技があまり見えなかった点は少し残念だった。このあたりは好みの問題もあるのだと思う。

清廉潔白で真っ直ぐな人物を扱っているだけあって、鑑賞後に何か残るものがあるかと言われるとあまりなかったのかもしれない。その点で、本作は私の好みの作品というわけではなかったが、小学校時代に囲碁をやっていたこともあって、作品理解自体は一段解像度高くできた自信もあり、気分よく家路についた。
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