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風が通り抜ける道のKUBOのレビュー・感想・評価

風が通り抜ける道(2023年製作の映画)
3.5
今日の試写会は、映画『風が通り抜ける道』ー東京オフィシャル試写ー。

フルカラーの美しいチラシを見た時からずっと気になっていた『風が通り抜ける道』をやっと東京で見ることができた。

主演は比嘉梨乃。歌手を夢見て東京へ出て早10年。CDも売れず、バラエティの仕事も上手くいかず、芸能人としてやっていく自信を失いかけているヒカル(比嘉梨乃)は、沖縄に残してきた父(シーサー)が癌で倒れたことを知る。

本作ではヒカルの職業は芸能人と特殊だが、東京で一旗上げてやろうとして10年というのは、誰にでも共感できる設定だ。

だが本作で良くも悪くもすごいのは、主人公の他にたくさんの一人称視点のある(あり過ぎる)群像劇だと言うこと。

35年間勤め上げた自衛隊を退職したのも束の間、退職金全額を詐欺に騙し取られ、無一文で故郷の沖縄に帰ってきたケンタ。妻と子供に逃げられて、東北〜北海道と彷徨い歩くホームレスのような男。事故で半身不随となり、車椅子生活を余儀なくされている美少女メイ。

この複数の一人称視点が複雑に交差していくのだが、正直言ってこの脚本は欲張り過ぎる。これだけのプロットをちゃんと見せるには、映画という枠組みより、本来ドラマ向きだろう。

さらに、本作はキャストがめちゃめちゃ豪華。山田邦子、具志堅用高、大林素子、三浦浩一、丈、上西雄大、Bro.KORN、塩谷瞬、大木凡人、他にもカメオで有名人多数出演。

これだけのキャストを詰め込んでそれぞれに見せ場を用意するから、細かいシーンが多いし、カット数も膨大だし、正直全体のことを考えればバサっとカットしていいエピソードもあったような気がする。

上映後の舞台挨拶で、出演者も監督自身も3時間の長尺である点に関して自虐的に語っていたが、どうやらこの点は秋に出品が控える◯◯国際映画祭と一般公開に向けて、更なる編集を行ないブラッシュアップする予定だそうだから、期待しよう。

「親と子」「故郷と夢」「沖縄だけじゃない日本各地の美しさ」。3時間という長尺は長過ぎる。脚本も編集もまとまりがない。でも「伝えたいこと」がいっぱいあって弾けそうな監督の熱意は伝わってくる。舞台挨拶からもこの作品に関わってきた人たちの熱意も伝わってきた。

2023年、これから歩き出していく『風が通り抜ける道』という作品のこの先が楽しみだ。

*ちょっと難しい話はネタバレのコメント欄で
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