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丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図 全14部のHarutacoのレビュー・感想・評価

4.0
今年の頭に初めて沖縄に行き、ずっと行きたかった佐喜眞美術館にも行ってきた。学芸員さん?職員さん?よりドキュメンタリー映画のお話をうかがっていて、とても楽しみにしていて、ようやく。

率直にいえば、これまでも丸木夫妻の活動に関心を持って、佐喜眞美術館にも行ったので、証言や絵の解説を通して知ってることが少し増える、くらいだった。もちろん沖縄戦を知ることの大事さを改めて噛み締めるという意味では観てよかった。絵を見たことがなかったり、沖縄戦のこと、佐喜眞美術館のことをまだあまり知らない人にとっては、たくさんの情報や感情が凝縮された大事な映画だと思う。逆に丸木夫妻のことをあまり知らないと、この映画を通して二人のことがどこまでわかるのだろうかという印象もある。

前半は、丸木夫妻や絵についてというより、それを通して沖縄を知る、というスタンスの印象。中盤で丸木美術館の学芸員さんによる丸木夫妻に関するコメントがある。それをうけて後半では丸木夫妻について深堀されたかな、と思うけれど、それでも少し物足りなさがあった。もっと丸木夫妻の制作場面を見れると思って勝手に期待していたけれど、見たことのある断片的な映像や写真しかなくて、資料としてそれしか残されていないのだろうなとわかった。

もう一つ個人的に好まなかったのは、ナレーションや音楽のトーン。もっと淡々と進めてほしかった。ドラマチックに仕立て上げる感じが、無言でありながら力強く語りかける絵画の魅力を失わせてしまったように思った。見る人に静かな思考を促すというよりも、プロモーション色を受け取ってしまった。テレビドキュメンタリーならよいかもしれない(家庭で見るテレビだと、音で視聴者を引き込む必要性が高い気がするし、関心の薄い人も見る可能性があるから)。テレビ放映も視野に入れた制作だったのかな。

とはいえ、伝えている内容はとても大事で心に突き刺さる。内地の人は沖縄戦のことをもっと知らないといけない。そういう意味では、沖縄に行けなくても美術館や絵画を知ることのできる(でも是非美術館に足を運んでほしい)、とても貴重な作品です。応援の意味をこめてスコア高めにしてます。
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